谷口ジロー展

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世田谷文学館(最寄り駅は京王線芦花公園駅)で今日から谷口ジロー展が始まった。私は漫画をほとんど読まないので、漫画家の仕事のことは何も知らないけれど、ひとつの作品(例えば週刊とか月刊の漫画誌での連載の一回分の作品)を作る場合、その絵を描くという作業だけでどれくらいの労力を費やしているものなのだろう。あるいはひとつの作品で、それはもちろん漫画家の作風とか内容にもよるんだろうけれど、どれくらいのカット数を持っているんだろう。そんなことも全然わからないけれど、一カットの絵にこれだけの迫真や工夫をもたらすエネルギーとそこにかける時間と、そのためには効率性やらスピード感も必須なんだろう、ものすごい高度な技を必要とする作業だと推測する。谷口さんの原画を見るのは、谷口さんと生前も亡くなった後もずっとかかわりの深い知人のYさんにもいつもご案内をいただき、これで三回かな、展示を見てきたが、そのたびに、私が漫画のことを知らないがゆえに勝手に思い込んでいる漫画という媒体で描かれる絵の質(は効率と多画面をこなすための簡略化のようなことがあるだろうと思い込んでいること)と、実際に目の前に展示されている谷口さんの絵の持っている緻密さや・・・そういう言葉を越えたところにあるのだろう「凄さ」とのギャップに驚いてしまう。画面の動きも動的に映画の導入を見ているようで、それは漫画なのだからそういうものだろうけれど、そのカメラワークと視点の移動が、比較ができるほど他の漫画を見ていないもののすごくスムーズで、あるいは劇的で、物語に引き込まれるようなのだ。会場でコロナ禍でずっとお会いしていなかったYさんと合流。少し絵の画面構成の妙のことや新しい出版物のことなどを解説いただいた。

閉館時間直前にYさんと一緒に文学館をあとにして、新宿へ行く。王ろじで豚丼を食べてから駅近くのディスクユニオン昭和歌謡館とジャズやロックの館に連れて行ってもらった。ECMのレコードジャケットがたくさん壁に印刷されているのに見とれてしまった。ECMの使う写真は実にECMであって、他にはない独特の感じ。ぶれたりぼけたり、流れたり、も自在で、ジャケ買い確率も高かった。

今日もこの写真をさっき見返していて、この「車のウインドウ越しに三人の人物が歩いているモノクロ写真」がジャケットのアルバムをアマゾンで買ってしまいました。ECMのアルバムデザインは同じディレクターがその独自な「感じ」を確立したのだろうか?それとも写真というより、文字の入れ方やフォントの方が大きく効いているのだろうか。

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