日常

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 朝、雨のなか、高速道路を東京方面へと走っている最中にラジオからスーパー・バター・ドッグサヨナラcolorが流れた。都内の桜はもう散り始めた。望遠レンズでのぞきこんだ遠く都心の高層ビル群はこんな風に霞んで見える。風も強く、寒い朝だった。黒いVネックのセーターを着て、さらにダウンライナーのついたステンカラーコートを羽織ったから、真冬と一緒だ。昨日がとても暖かかったのとは大違い。春の三寒四温、日々のあいだの気温のばらつきが大きくて、体調管理には気を付けようとラジオが言っていた。ラジオではお子様がこの春に社会人になって旅立って行った方からの投稿が三通か四通読まれていた。自分が病で余命宣告を受けている方が、息子を社会へ送り出した、社会人になった息子はいつも優しい、という投稿を女性アナウンサーが読み上げた。会社に着く。傘をさして駐車場から自分の席のある建物まで歩く。桜がさかんに花びらを散らしている。花びらは芝生につきささるように落ちていく。朝からコンビニで買ったかき揚げ蕎麦を食べた。会社の電子レンジで4分と少し掛けて温めて食べた。食べながら舞城王太郎の中編「私はあなたの瞳の林檎」を読み終えた。恋愛において相手との関係は民芸の器のようであるべきで、相手を高級でケースに入って飾られている器のように大事にするのはかえって怖いことなのだった、と中編小説を読み終えて、そんなふうに青臭いことを考えた。こんどはさるカメラメーカーの出しているサークル紙をめくってみたら、写真家の元田敬三さんと鶴巻育子さんの対談が掲載されていて、写真が面白いのは何を撮っても撮影者の内面がシャッターを切るだけで現れる、と鶴巻さんが言っていた。自動販売機で100円で紙コップに注がれるブラックコーヒーを買ってくる。それを飲んでいたら、7:00になる。私の次に出勤してきたGさんが「寒い、寒い、寒い、寒い」と言っている。会社がとっている新聞に、プーチンの録音された日々の声から気持ちを分析するとこういう心境にいるのではないか?という類推結果の記事が載っているのを斜め読みする。それからやっと仕事を始める。まず夜に届いているメールを読むことから仕事を始める。こんなのが毎日その具体的行動の中身は全然違うのに、毎日同じように始まる日常ということだ。