4月12日火曜日。昨晩、京都から帰り、一夜明けて火曜の朝の7時前。在宅勤務で支給されている会社のノートPCを立ち上げ、昨日届いていたメールを読むことから仕事をはじめる。
夜になり一昨日と昨日に撮った写真を見直すけれど、なんだかぱっとしない。「いい写真」って言い方があって、なにをもって「いい」としているのか？既存の評価基準で「いい」があるなら、その基準が既存であるということをもって、それは「よくない写真」とも言えるのではないか、とか思うこともある。いままでに誰も撮ったことのない新しさがあり、すなわち過去の基準には当てはまらないからそこからは「いい」とは言えずに「評価不能」となり、だけど同時に最初の数人の理解者から始まるのかもしれないが、最後は広く新しい基準をそれ自身が生み出したその新基準でもって「いい」と言われ、フォロワーを生むような。それが本当の「いい写真」・・・かな。とか思うのは、情けないことに既存の基準ですら「いい」と思える写真が少ないからだ。ぱっとしない。
上の写真は東海道新幹線がもうすぐ京都駅に到着する、すでに相当減速したところで進行方向に向かい左側の窓から見える光景で、何度もたくさんの写真を見返してるうちにふと目に留まった。目に留まった理由は「旅の最初のひとこま」がこの写真だと思ったからだ。そこで「旅の始まりはいつからか」ということを考えたのだった。この写真を撮るまでに私は車窓の富士山やらなにやら何枚かの写真を撮っているのだが、それはすでに京都に向かう新幹線の中にいるから旅ははじまっているわけだけれど、それでも旅の始まりの最初の一コマという感じはしない。この写真こそが、旅の始まりの最初の一コマに思える。まぁ、車内放送がいい日旅たちのメロディーのあとに、もうすぐ京都に着くから支度をしてぼちぼち席を立つ方が無難ですよ、と言ったあとだから、わかりやすい「最初の一枚」かもしれない。この写真いついていえば、ちょうど赤いランニングパンツをはいた人が走っていて、その写真のなかでは小さな点となる赤があることで、写真を撮ろうと思ったものだった。半逆光でレトロレンズでふんわりと春らしい・・・かもしれない。鉄橋のある風景は好きですね。これはJR奈良線なのだろうか？
旅の最初の一コマとして、以前もこのブログに載せたことがあるかもしれないが、下の写真はずいぶん前、二十年かもっと前にパリに出張したときに、ホテルにチェックインしたあと、天気雨の昼下がりにかの地に赴任していた同僚の車に乗せてもらいエッフェル塔の方に走り出したときの写真。パリに飛行機が着陸し、そこからパリ市内までやってきて、予定したホテルにチェックインして・・・と、この写真を撮るまでにすでに一時間かそこら到着してから経っていてその間にも写真を撮っただろうか？たぶん数枚は撮っているのだが、この写真が旅の最初の一コマであり、旅がいま始まったとき、というように思っている。
上の写真が2022年の4月上旬の京都への旅の最初の一コマであり、下の写真が1990年代後半のパリへの旅（実際は出張ですけどね（笑））の最初の一コマ、自分の中の区分としてはそういうことになります。これって、シャッターを押したときに自分の気分が旅が始まったと思えているかどうかってことが決めているんだろうな。心の在り方が「ここからが旅」のような、緊張があるものの解放感がある。
ところでぜんぜん話が変わりますが、朝ドラマのヒットからか、ここのところ伏線回収という単語をよく目にしますが、物語の伏線（という言い方が昔から普通にされていたのかどうか不明ですが・・・）がきれいに収まらないと、なんとなく奥歯にものが挟まったような感じになるし、それが気になって、物語を心底楽しんだという感じになれない、という経験は確かにある。確かにあるけれど、いまの言われ方は、それが見事だとかなんとかで、物語とはいかに伏線が回収されたかでその良し悪しが決まっているかのようで、これってレコードでいえばＳ/Ｎがいいとか、演奏でいえばミスタッチがないとか、カメラでいえばひたすら画素数が多いとか、それに越したことはないのかもしれないけど、なんだか評価基準のあいまいさ、人の心の琴線のふれ方の違い、のようなことで共通認識がずれるのが怖くて、評価を共有するために本質ではないところで強引に評価基準を持とうとするような仲間意識の現れなのではないかとちらりと思ったりもする。回収が下手だったり放り投げられたままの伏線があっても、それって物語を書くところで、作家が即興演奏（的な書き方）をしている結果かもしれず、そんな些細なことよりもっと、ぐわーっと読書により心が動かされる方がいいと思います。しらんけど。
