うしみつどきに起きてしまった

 朝、3時台に目が覚めてしまった。もう一度眠れば良いのに、目を閉じても眠りがやってこなかった。4時には眠るのをあきらめて、部屋の電灯を付けて、ベッドの上に胡坐をかいて座って、スマホを付けてみる。深夜、誰かからメールやラインが届いていることもない。スマホを置いて読みかけの文庫本を手にしたが、読書に没頭もできなかった。それなのにふと気が付くと長針がずいぶん進んでいる。のろのろと起きだして、洗面し髭剃りし歯を磨いた。いつもより10分ほど早い5時10分に自家用車で会社に向けて出発した。子供の頃に妖怪ブームの年があった。たぶん11歳か12歳だった。二本立ての地方の映画館に友だちと二人で日曜日、子供向けの妖怪映画二本立てを観に行ったりした。草木も眠る丑三つ時、と言う言葉があることをそのときに知って、いつかはその丑三つ時に起きていたいな、と思ったが、思うだけでそんな時刻には眠っていた。今朝はそんな丑三つ時に起きたってことだろうか。

 あるとき丑三つ時に、急に起きてしまい、誰かが玄関に訪ねて来ているという確信があって、寝ぼけたまま玄関に行ってドアを開けたが夜風が入っただけで誰もいなかった。おかしいなぁ・・・ふとそこに来ていたのは父のような気がした。もしかして父になにかあったんじゃないか?翌朝、実家に電話をしてみた。父はいつもと同様に元気に暮らしていて、それがわかったので、深夜に家に来たように感じたから胸騒ぎがして電話をした、なんてことは言わなかった。父は2001年に亡くなったが、その三年か四年前のことだった。

 夢の中で自分は素晴らしい美メロの曲を思いついていた。そのあとに起きても、頭のなかにはメロディーが残っていたから、あわててそのメロディを譜面にしたことがあった。あれも丑三つ時だった。夢の中でも丑三つ時に譜面にしたときまでも、それは素晴らしい曲だったが、朝が来て譜面を見たら、もう光り輝く美メロではなく、なんだかよくわからない曲だった。

 深夜に起きると、いまこの日本で関東で東京か神奈川で、同時に起きているのは誰だ?と思う。起きてますか?とラインで誰かに問いかけるわけにも行かないが。寂しさや不安を抱えて眠れない人もいるだろうか。話せばお互い落ち着くものなのに。誰かが訪ねて来た気がして起きて、玄関の小さな窓から外を伺い見る人もいるかもしれない。何かの手段で、会ったこともない誰かとスマホで匿名のやりとりが出来るとする。はじめまして、あなたはなんでこんな時刻に起きているの?いや、そもそもこれが私の毎日の規則正しい時間割で、これからが眠る時刻なのです。なぜなら職業は・・・。あまり楽しい会話にはなりそうもない。

 銀河鉄道を走って行く蒸気機関車のドラフトと汽笛の音を深夜に聞いたこともある。いや、それが銀河鉄道だったのかどうかはわからない。家のいちばん近くに走っている鉄道は東海道線で、当然電化されていて蒸気機関車などイベントですら走らない場所だ。だけど眠れない夜にそんな音が聞こえたのだ。

 そんなわけで、今日は会社でずっと眠かった。