どこへ

 昨日の金曜日、宇都宮市に出張があり、一泊して、今日の昼に湘南新宿ラインで帰宅した。宇都宮には2017年初まで結果として15年も単身赴任していた。15年間、宇都宮と茅ケ崎を行ったり来たりするときに、たいていいつも車窓から写真を撮っていた。その頃は長い乗車時間を通じて、ここにはこういう踏切があり、あそこには車両基地があり、もう少し行くと線路沿いの公園のジャングルジムがいい感じで、平屋の文化住宅のような古い家はK駅を出てすぐで、O市の乗馬クラブは運が良いと白い馬が見える・・・というように「そこを撮る」定番が出来ていて、どんどん景色が後ろに飛び去って行く車窓からの写真撮影であっても、そこには慣れが生まれていつの間にか繰り返すだけで新しいなにかを撮ろうと思わなくなっていた・・・・のかもしれないな。というのも今日、久々に車窓から写真を撮ってみると、そういう定番をかなり忘れてしまっていて、通り過ぎる瞬間に準備が悪くうまく写せない、一方であれだけ何年も何度も車窓から外を見続けてきたのに、あらたにこんなところがあったのか!と気づく場所ばかりだった。車窓からの風景の写真を撮るときは、建物や植物を撮るのと同じくらいの頻度で、人がいるとなるべく撮ろうと思う。それは究極の偶然の街角スナップかもしれない。上の二枚の写真は、秋の、昨日は雲一つないピーカン照りだったが、今日は晴れは晴れでも薄い雲があるような陽射しで、それが冬へのカウントダウンのような光を作っている。

 赤い帽子を被った女性は大きな荷物を引っ張って、スマホで地図を確認しながら(だと思う)、どこへ向かうのか?広い駐車場にぽつぽつとしか車が停まっていない。広い駐車場にはところどころ雑草が生えていて、その一部は冬に向かい枯れている。駐車場の向こうの家並には高いビルはなくてみな二階建ての個人住宅だ。

 オートバイの男は踏切に向かって低速で近づいている。もう少し踏切に近くなると停車して男は足をアスファルトに付けるのだろう。私の乗っているこの15両編成の電車が通り過ぎると踏切が上がり、男はクラッチをローに入れてから右手のアクセルグリップを開けつつ左のクラッチレバーをゆっくり開放し、オートバイが発進する。休日にどこかのパチンコ屋に行くのかもしれない。だけど踏切の向こうのアパートに住む恋人に会いに行くのかもしれない。

 今日はずいぶん気温が上がった(23℃くらい)のどかな秋の日だった。