カメラを出すか出さないか

 少し前に出張で磐越西線に乗った。郡山から会津若松方面に向かって右側の席からは磐梯山が見えるのだが、私は左側に座ったので、車窓は農地と思われるうえに積もった雪原が見えるだけだった。写真を撮るか撮らずに行くか、迷っているときがある。すぐ隣に他人が座っていると、写真に夢中になるのに抵抗感が生じる。小さくてもコンパクトデジカメの絞りが閉じて開くカシャという音がするから、気になる人は気になるかもしれない。だいいち、雪原が珍しいとは言え、そんなにバシャバシャ撮る、その訳がわからない・・・変なおじさんだ、と思われるかもしれない。本当は思われても構わないんだけけれど、どこかええかっこしいの気分が枯れ切っていないから躊躇が起きて、撮るのはやめようと思ったり、やっぱり撮ろうと思ったり。すると、車窓にとてもいい感じの景色がやって来ては飛び去って行く。おっ、やっぱり撮ればよかったな・・・そう思ってカメラを出しいつでもシャッターが押せるようにしておくが、今度はさっきのような景色が現れない。そのうちにまた躊躇が盛り返し、カメラの電源をオフにする。するとオフにした途端に撮りたかった景色がやって来ては後ろに飛び去って行った・・・また肝心の景色が撮れなかった・・・上は撮ることが出来たなかの「まぁまぁ」な写真です。

 猪苗代湖という名前を聞くと野口英世を思い出すのは、子供の頃に子供向けの絵本で野口英世の伝記の本を持っていて、その最初の方のページで、春に猪苗代湖を見下ろす斜面のようなところでのどかに暮らす、もしかすると居眠りをしている絵だったかな、農民の暮らしの絵があったことを覚えているからだ。そんな長閑な日に、子供の野口英世が火傷をおうんじゃなかったかな?その長閑な日に火傷という転換からよく覚えているのだろう。

 伝記の本はほかにも何冊か買ってもらったかもしれないが、こんな風にちょっとだけでも覚えているのは野口英世だけだ。