ずっと曇っていた土曜日、夜から雨

 東麻布にあるPGI(フォトギャラリーインターナショナル)に濱田祐史の写真展を観に行く。田町駅から三田から東麻布へと歩いてみました。正面に東京タワーが見える、この写真の手前左側のビルは三田国際ビルという高層ビルで、調べてみたら1975年竣工で地上26階建てのオフィスビル。三田国際ビルというビルがあることなんて今日ここを通るまで知らなかった。子供の頃に霞が関ビルが出来たときはずいぶんニュースになっていたのをよく覚えています。36階建てという階数までいまも覚えている。竣工は1968年。そのあと1970年に浜松町の世界貿易センタービルが出来て、貿易センターは40階で霞が関ビルを抜いた。その二つのビルを子供心にすごい!と思った。当時の「すごい」は高度成長期における国民感情のようなことで、国民がみな一つになって成長を喜ぶような、誇りを感じるような気分で、それが子供にも伝わっていたと思う。実際は、反対派もいただろうし、なにか将来を憂う人もいたんだろうし、そのとき大人だったらそういう意見もあることに気付いたかもしれない。でも電車で1時間で行けるとはいえ、東京に行くことなど滅多になかった衛星都市というより地方都市住まいの子供の私は、ニュースを見て、上記のようにとにかく「すごい」と思っていた。思うしかなかった。そんなことを思い出す。

 濱田祐史の写真展は紫外線に感光する版に長時間露光で像を作りこんだ写真で、コントラストの高い、印象として細かいところまで写っている写真だったが、そういう具体的なことじゃなくて感想はどうだったかといえば「静謐」な感じだ。これはもしかすると、信じられないほどの超秒露光というその時間がもたらす効果なのかもしれないな、と思った。露光時間が長いことと写真が静謐に見えることと、理屈で考えると、動いているものがみな消えてしまうからその無人な感じ動きのない感じが静謐という見え方につながっている、とかなんとか理屈で考えるというより理屈をでっちあげることは可能だが、それが理由なのかどうかわからない。そういうことを前提に写真家が選ぶ被写体が静謐感をもたらす選択にならざるを得ないのかもしれない。あるいは「静謐」という単語を持ち出すのが安易であって、なんでもかんでもそんな単語でごまかすなよな、と自分に言いたい気分もある。

PGI | 濱田祐史作品展「Incidence and Reflection」

 写真展のあと、麻布プラザという古そうなマンションの一階のレストランで昼食を取る。通りすがりに、えいやっ!と入った店だったが、下仁田ネギを使ったアンチョビソースのパスタがとても美味しかったです。

 今日はずっと曇りで、なぜか上の写真を撮ったとき、ほんの数分だけ淡く日光が差した。夜は雨。