狐が出そうな夜

 夜遅い時刻、たまに最寄り駅に着いた電車から吐き出され、家路を急ぐ人が、川沿いの、人と自転車用の小路を急ぎ足で歩いて行く。それも一人か二人のことで、すぐに人通りはなくなりまた五分後の電車が着くまでのあいだ、この写真の川沿いの住宅の中には家族たちが団らんしていたりもう就寝しているのだが、それでも、カメラをぶら下げて静かに歩きながらも頭をきょろきょろしては、撮るべき場所を探して歩く私は、誰もいない、人っ子一人誰も見えない町で、いまこの瞬間に世界には私しか生きていないという少年時代からずっと恐れているような妄想にとらわれるような気持ちを・・・少年のときはその瞬間に怖さを感じたのだが・・・そんな気持ちをまた客観視して懐かしみつつも、わずかに緊張して歩いている。川は護岸に囲まれ、その護岸は真っ黒で、これではまるでブラックホールじゃないか・・・黒い川に誤って落ちてしまうと、このご案の真っ黒に吸い込まれて別世界へ行きそうだ。壁抜けの感覚。アフターダーク

 それにしても、街の灯りを下から受けた雲がこれだけ白く見えるというのに、川はなんだか黒過ぎる。SFネタじゃないけど、川が雲を食べてしまいそう。狐が出ますかね?