日曜夜のドライブ

 部屋の中、平積みされてる文庫本のタワーの、その中層部分に五十枚くらいL版の写真プリント束が挟まっていた。写真を誰かに見てもらうとき、写真展をやるとき、写真のzineを作るときなどに候補写真をインクジェットプリンターで出力する。もっと多いときは、ネットプリントを頼むこともある。誰かに見てもらったり、写真展がおわり、zineも出来上がると、候補写真のプリントの束は用済みになる。捨てるときもあれば、どこかに取っておくこともある。でも積読タワーに紛れているとは、紛れさせたのは私なのにびっくりした。その束を構成してる一枚一枚の写真を見てみようと手にしたときに、手元から1枚だけ、床に写真が落ちた。それが、上の、写真。

 1980年代か90年代に戸塚駅前の一般車用ロータリー……そんなのがあったのかどうかわからないけど……そうなんじゃないのかなあ?とは思う。たぶんこの真ん中に写っているワゴンタイプの初代のブルーバード(かな?)が、この写真を撮ったときですら、もう古くて滅多に見ない車で、それで慌てて撮ったのではないだろうか?そんなふうに推測。手前の車のバックミラーがドアミラーではなくボンネットミラーなのが懐かしい。

 片岡義男の「彼のオートバイ、彼女の島」という長編小説だったと思うが、もしかするとオートバイの出てくる別の短編だったかなぁ……抜きざまに自動車のバックミラーをレンチなどで叩き落とすという「悪さ」をする場面があった。その小説を読んで、もちろんそんな悪いことを実際にはしないけれど、頭の中での仮想として、抜きざまにミラーを叩き落とす場面を思い浮かべることもあった。若い頃は感情の起伏もあるから、むしゃくしゃするときもあったのだろう。明日からまた新しい平日が始まってしまう日曜の夜の憂鬱を吹き飛ばそうと、日曜の夜の、たとえば9時から10時半に、もう車が少なくなった国道を一回り走ったりしたものだ。