日が昇る方向へ走る

 午前6時にほんの少し前。通勤経路の、高速道路を降りてからしばらく走る幹線道路では、この季節のこの時刻だけ、真正面に朝日が昇って来る。正しくは秋にもう一回こういう日時があるのだろうか。この日(3/1のこと)はずいぶん空が焼けた。焼けた空の色は赤ではなくてオレンジ色だった。日が昇って来るのを見ると、印象として、明るい未来に向かうような感じがするのは(初日の出を拝む気持ちも同様なのだろう)これから新しい一日が始まるという真っ新なノートブックの一ページ目にきれいな最初の一文字を記そうとするような気持ちになるから、なのかな・・・少し心が高揚する感じがなくもない。だからやがて道が右に緩やかにカーヴしてしまい太陽が正面に見えなくなると、ちょっとがっかりする。太陽に向けて走っていたかったなと思う。日が昇ってから30分もするとこんどは日の光は白くなり町を照らす。本当はもうその頃から夕焼けが始まるころまでの昼間はずっと、日の光の色温度は変わらないのだろうが、なんだか昼間よりも、この日が昇ってから30分くらいしたときに、町がいちばん白く見えるのだ。

 3月は不安定だ。季節も、私の身体も。春に向かって全力で前へと走り出すとしばらくして腰に巻かれた後方に伸びているゴムにより冬に引き戻される。すると私の心臓は、真冬や真夏のように同じような日が続くことが多い季節と比べると、ドキドキ主張し、脈が飛ぶことも頻繁になる。季節の変わり目というやつ。もう二十代の前半から医者の言うところでは「心配のないタイプの」不整脈が3月や10月には頻繁に起きる。最初は21歳のときに大学の健康診断で見つかった。普段は飲まないが、不整脈が頻出する日、そういうときにだけ飲む薬がある。白と青の二色のカプセル。白と青の組合せは、なんとなく海とか船とか船員などを思わせる。薬を見るとそういう色使いのイラストだったか、ゆるキャラもいたような……横浜マリノスかな?などとふと思うが、それ以上は調べない。ふと思ったことをちゃんと知ろうと思うのは悪いことではないけれど、あまりに検索検索検索検索……と調べてばかりいるのも、なんだか雲の上のクラウド世界に搾取されてる気がする。だから「それ以上は調べない」も大事かもしれない。同時代においては。でも、たとえば昨日のブログでも、ユリカモメは内陸まで飛来する、ということを調べてしまった。

 そういう季節。そういう日々。