夜に似合う貨物列車

 春の日の夜は思いのほか冷えることがある。カメラを持って街歩きをすることは自分の意志で、だけど少し寂しい気分にもなる。ならばさっさと帰れば良いものを、その淋しさが楽しくて・・・という複雑なおっさん気分になり・・・街歩きが延々と続いてしまう。工事が行われていたせいか鉄道の鉄橋がライトアップされているかのように浮かび上がる。青く塗られたアーチのある鉄橋だ。この鉄橋には頻繁に通勤の電車が行き交うが、それに混じって貨物列車も通る。貨物列車が大きな容赦のない音を立てて走り去っていくのは、夜に似合うと思う。

 むかし、70年代、はっぴぃえんどというバンドが登場したときに夢中になったわけでもなく、そのバンドが当時主流だったフォークおよびフォークロックという音楽分野から一線を越えた先にある日本語ロックを生んでいたこともわからなかったが、それでも友人某がゆでめんという愛称だったアルバムを持っていたから、たまにそのレコードを聴いた。番組ラジオDJが誰の曜日だったか覚えていないが、オールナイトニッポンもしくはパックインミュージックでよく「さよならアメリカ、さよならニッポン」というはっぴぃえんどの曲がかかっていた。いまは作詞家文筆家のドラムの松本隆、ギターの鈴木茂、ベースの細野晴臣、そして亡くなった大瀧詠一がバンドメンバーだった。そこから始まり、いろんなミュージシャンが名を連ね、日本のニューミュージックやロックの系譜がつながる。そのなかに亡くなった小坂忠や中野督夫や鮎川誠らもいて、もちろん高橋幸宏もいた。どうも細野さんがどのミュージシャンにもつながっている気もする。シーナ&ロケッツのユー・メイ・ドリームの作曲は鮎川誠・細野晴臣の連名なんですね。上述のお亡くなりになった方々に「さん」や「氏」を付けてみたが、そんな感じじゃなかったので、氏もさんも取り払いました、すいません。

 ミュージシャンの訃報を聞くと皆まだ若いのに・・・と思う。数日前に教授こと坂本龍一の訃報に接したときには、あぁ・・・と思わず絶句をしました。合掌。