写真を作り込むこと

 ちょっと面白かったので、昨日のブログの二枚目に載せた写真と同様に、フォトショップで追い焼き/覆い焼きをして、写真を作り込んでみました。フイルム時代は、撮った写真を真っ暗な暗室で印画紙が感光しないオレンジ色の暗室電球だけが灯るなか、印画紙に露光をするときに、細い針金や割りばしの先に丸く切り抜いた紙をくっつけた自作の道具や掌と指で作った影で、覆い焼き(覆ってない部分を主語にすると追い焼き)、すなわち印画紙に映ったフイルムのネガ画像を印画紙全体で均一の露光時間で感光するのではなく、部分部分で露光時間を変えながら、目的とする写真が出来るようにしたものでした。それと同様のことを、PCモニター上でフォトショップを使ってやってみたということです。この写真を作ったときのやり方は、追い焼きする部分をマウスで囲って(その領域の境界をぼかしつつ)コピーしてレイヤーにして、レイヤーの透明度とレイヤー部分のトーンカーヴを変えながら試行錯誤して決めて行ったのですが、そのマウスで領域を囲う作業やトーンカーヴを変える作業は感覚に基づくえいやっという感じで、暗室作業同様にとてもアナログでした。

 海沿いの国道の舗道を日傘をさした女性が向こうへ歩いて行く。女性の後ろの舗道は少し暗く、これから歩いていく道は明るく残しました。左側と右側を焼き込んで暗くして道の先が余計に白く光るようにしています。フイルム時代/暗室時代もそうだったけれど、覆い焼きを施すのだとすれば、それは写真を作る最終段階で、目の前の光景を写し取るコピー機械的機能の成果物(真を写す写真)であるネガフィルムから、作者の意図に基づいて見映えをコントロールするという、言い換えると写した真から逸脱させる、ような作業になります。やってみて思ったのは実はフイルム時代暗室時代の方がよほどこういう作者の意図を反映させる作業を頻繁にやって、すなわち自己の表現に注力していたんじゃないか、ということです。いまはスマホにせよインスタにせよ、すでに決められた画像のテイスト変更メニューというのかプレートから、一つをクリックするとビビッドとかウォームとかビンテージとかになりますが、自分で考えて試行錯誤していた覆い焼きとは違う、どちらかといえば機械が表現者で、選ぶ方は鑑賞者みたいなことじゃないかな、とも思いました。

 とはいえこのやり方がいい!からもっとやってみたい、とも思わないな。ちょっとやってみたらこんなことを思いました、という報告です。

 やってみて思いのほか写真の見え方が異なるのでちょっと驚きました。参考にコンデジで撮った元画像を下に載せておきます。これはこれで気に入っています。2015年か2016年の鎌倉の海沿いの国道です。