まだ使っていない

 三週間ほど前に西大井というはじめての町を友人と二人で歩いていたときに、ambos coffeeというギャラリーカフェがあったので、入って見たら爪楊枝の展示をやっていました。残り数枚になっていた36枚撮りフイルムを撮り切りたかったこともあり、展示された楊枝を数枚撮ってみました。日本では当たり前に丸楊枝だけが普及しているけれど、世界には楊枝の形や用途や長さにもいろいろと分類があるそうで、例えば、歯間の形状に合わせた断面が二等辺三角形の楊枝があると知りました。

 このときは雨上がりで、雲が切れた最初の日差しがさーっと店内にさしてきました。どういう根拠でそう思ったのかわからないけれど、その日がさしてきたときに宮沢賢治の小説みたいだ、と思いました。一体彼の小説のなにかに、さーっと日がさしてくる場面があっただろうか?

 ひと箱、二等辺三角形の断面をもつ楊枝を買いました。いまこの文章を書いている自室の机の上のごちゃごちゃと小物があるなかに置かれている。そのうちに使ってみようと思いながら三週間経って、まだ使っていないですが。

 使っているもの、使っていないもの、含め、あれこれ小物で机の上がごちゃごちゃになる。それもいつものこと、いつもの私。