ヴィンテージマンション

 最近グーグルマップの、上空から俯瞰した3D映像で立体的に建物などを見ることができるイマーシヴ・ビュー・モードというのがあります。この写真のヴィンテージマンションではそういう表示は出ないとは思いますが・・・どうにかすればそのモードでどこでも見られるのかな?・・・そのモードで例えば横浜市立図書館を見ると、六角形かな八角形かな、角型の柱がつながっているようなダイナミックな建築構造がまるでヘリコプターで建物の周りを遊覧飛行しているように見ることができます。東京タワーでも目黒の庭園美術館でも、著名な建物は大抵それで見ることができる。そしてそのモードで建物を見てしまうと、もう、のこのことワイドアングルレンズを付けたカメラをぶら下げて建物見物に行って建物全体写真を撮る意味はないように思ってしまう。もちろん建物の細部は別ですよ、あるいは写真に撮ることが主目的ではなく、建物を見ることが主目的であるべきで、そうであればそこへ行くことがいちばん大事ですが。すなわち、建物の全体がどうなっているのかは、街路樹があり、周りの建物が建て込み、すぐ近くの地上から見上げる視点しか確保できない(ときには近隣ビルの上階から眺められるかもしれませんが)制限された条件よりもイマーシヴ・ビューの方がはるかに理解が進むということです。

 それはさておき、写真は都内を歩いていて、見つけたヴィンテージマンション。マンション名の「ル・ソレイユ」で検索すると、同じ名前のマンションは全国にたくさんあるようですが、このマンションは1971年築であることがわかりました。写真は下から見上げて(それしか撮りようがない)撮っているので先すぼまりの台形に写っているところから、台形歪をかなり改善すべく、フォトショップでゆがみ補正をしてます。もしかするといまのスマホのデジタル画像処理を使えば、そんなマニュアル操作の画像処理をやらなくても最初からこう写るんだろうか?

 上の写真は逆光に弱い70年代のオールドレンズで撮ってほぼ写ったままのカラー写真です。最新のレンズを使えばこんなにふんわりは写りません、見た通りにしゃきっと写る。だけど70年代に建ったマンションを70年代に製造されたレンズで撮るのも悪くないですね。そして下の写真は上の写真をもとに、それこそ70年代風にコントラストを上げてノイズを入れてみました。下の下の写真はさらにそれを極端にしてみました。こんなのは現像液やら定着液やらに、引き伸ばし機でネガ像を感光させて浸してプリントを作っていたアナログ時代には、印画紙の号数を上げたりその他の「技」を駆使しないと出来なかったけれど、いまやちゃちゃっと可能。ちゃちゃっと可能だから「なんちゃって」に過ぎないということでもないでしょう。

 実験のように3枚の写真を載せましたが、どれがいいとか悪いとかいうことでもない。写真からどういう印象を持ってもらいたいか、などという傲慢な写真家の意図を表明すべきことでもないかもしれない。ただ三枚の違う写真が出来ました。もし写真があなたの心になにかを起こすのであれば、それでいいのでしょう。

 それにしても60-70年代マンションにはかっこいいものがあるものです。このマンションの今後のことは知りませんが、全体としては、いまちょうどその頃の建物が建て替え時期を迎えている。