見る前に跳べ

 新宿御苑に近い路地に面した古く小さなビルの二階か三階に写真のギャラリーを併設した写真集書店(出版も行っている)蒼穹社がある。写真はそのレトロビルの階段で、右側のドアにOPENという札が掛かっているのが蒼穹社(だったかな・・・)。四谷から新宿御苑前新宿三丁目、なんならゴールデン街あたりも経由して、新宿駅まわりのメーカー系ギャラリーまで、十年くらい前には、ギャラリーを五つも六つも、順に巡っていた。

 いまはブログやインスタやなにやらかにやらで、見ている写真作品の数は当時よりずーっと多くなったが、写真はどんどん眼の前を通り過ぎて行く感じで、作品をまとめた人の気持ちや、表現したかったことなどは、以前より深く考える機会が減ってしまった。だから派手で映えた写真にばかりに惹かれたり、一方で疲れたりもしているかもしれない。

 とか思っていたところ、先日、東京都写真美術館で恒例のシリーズ企画「日本の新進写真家vol20、見る前に跳べ」を見たら、出展していた五人のなかの淵上裕太氏、星玄人氏、という二人のストリートスナップの正面切って被写体となった人間臭い人々に迫っていく写真が、パンクロックの登場みたいで、これぞ本来の写真ってものだろ!という勢いがあって、すごく気持ちが高揚出来ました。それともう一人山上新平氏の作品の静謐と狂気と、時間の流れが、厭世観と微かな希望に包まれたような、額の周りが青く光る暗い部屋での展示がはかなくも美しかった。行ってみてよかったです。