この素晴らしき世界

 とある場所で開かれた仕事関連の立食パーティーで、ジャズのデュオ、それもギターとアルトサックスという変則的なデュオの演奏を聴いた。奏者二人は日本のジャズをそれなりに聴いていれば、誰もが名前を知っている40代の方で、私はギターの方のリーダーアルバムをtsutayaで借りてCDに焼いたこともあったし、サックスの方の参加しているバンドのCDを買ったこともあった。ここに名前を挙げないのは一応シークレット・ライブってことになっていたからだ。一曲目の「酒と薔薇の日々」から始まって、スタンダードを三曲くらい演奏し、最後はオリジナルがルイ・アームストロングの「この素晴らしき世界」だった。

 今日になって、この曲の歌詞の和訳を調べてみた。この歌詞が出来たとき、作詞家はその時点の「今現在」のことを素晴らしいと思って作ったのか、それとも夢想した素晴らしき世界のことを歌詞にしたのかな。本当に、この歌詞のような世界になってくれれば素晴らしいに違いないよ、と思った。

 緑の木々、赤いバラ、青い空、白い雲、神聖な夜、虹・・・そして、通り過ぎる人たちにも虹の美しさがあり、友達たちは「ごきげんよう」と言うが、それは「愛している」ということと同じ。赤ん坊はこれからの未来に、僕以上にいろんなことを学んでいくだろう。そういう世界が素晴らしい世界。

 ここには、自然の美しさと人々がお互いに愛し合っていることが、成長と進化をもたらし、その結果として、この素晴らしい世界が未来のもっと素晴らしい世界につながっているんだ、と歌われていた。

 使い古された椅子と、新品のきれいな椅子を比べると、どちらが美しいのだろう?もちろんそれは、何をもって「美しい」とするかによるのだけれど。スポットライトが残る奏者が去ったあとの椅子。