人生を語るな

 先日、月曜日だったかな、通勤のために自家用車を運転しながらラジコで村上ラヂオのアナログレコードの回を聴いていた。村上さんが、ジャズ喫茶で働いていた頃に知り合った後輩に、後の映画監督の小林政広監督がいらっしゃって、小林さんは監督になる以前にはフォークシンガー林ヒロシの名前で活動をしており、LPレコードを一枚出している。そのレコードにクレジットされている名前にはピアノや編曲に坂本龍一さんの名前もある、という紹介のあとに「片道切符」という曲がが掛かった。その歌詞をいま調べようとして歌詞ネットを調べても掲載されていなかった。だからうろ覚えだが、おいらの人生、といった歌詞があったと思う。その人生が「ずたぼろ」「おんぼろ」「風任せ」「きまぐれ」???歌詞に使われていた言葉をちゃんと覚えていないが、そんな風になんらか人生が形容されていた。

 1970年代、フォークソングブームで歌われた曲のなかには、ずいぶん「人生」が歌われていたような気がする。20代30代の若い歌手や作詞家が、人生を歌詞にするなんて、当時の年配の方々のなかには「ちゃんちゃらおかしいぞ、若造めが」と思って聴いていた人もいただろうな。

 人生という劇場、この曲は知らないのですが、フォーククルセダーズの歌った曲のよう。ささやかなこの人生、かぐや姫解散後の伊勢正三が二人組のフォークデュオ「風」で歌った曲。当時はあんまりヒットしなかったが、のちのちまで歌い継がれている感じ。拓郎は「人生を語らず」だから、振り返らず進もうぜ、と言っていた。されどわたしの人生 は斎藤哲夫が歌う、青春の苦しさと貧しさを憂う。ヤング101の「人生すばらしきドラマ」と言う曲は、高校時代のクラス対抗合唱大会でわが3年2組が歌った曲。素晴らしい出来栄えで、みな入賞、どころか優勝を確信したのだが、なんと!数秒の規定時間オーバーで失格に。悔しかったときの記憶はいつまでも鮮明ですね。その歌詞より「船乗りは教える 人生は海 旅人はつぶやく 人生は旅 そうさ 君の人生は 君だけのもの 光の中を さあ歩きだそう 地球は ぼくたちのためにあるんだ」、作詞は山川啓介

 いま、歌詞のなかに人生が出て来ると、上に書いたように「若造がなにを偉そうに」と自分自身が思ってしまう年になった。たくろうが人生なんか語るなと歌っていたから、人生を語るなんてダサいぞ、と刷り込まれたところもあったんじゃないかな、私の場合。

 だけどこうして一つの曲の歌詞を見ると、当時のフォークソングが、まだ若いくせに過去を振り返って自分の人生はこうだったと総括していたばかりではなかったんだな、とわかった。上のヤング101の曲からの詩の引用は、これから先にある、辛いかもしれない人生に、どう向かうか、どう夢を持つかを応援するような曲だ。

 ・・・でも、私は、若いくせに人生を振り返るのも嫌いだが、実は、引用したものの応援歌も嫌いなのです(笑)・・・きれいごとに聞こえることが多いからなんだろうなぁ、すいません。

 なんてことを、林ヒロシという歌手がむかし歌った曲を聞きながら、思っていました。ところでネットを調べてみたら、この「片道切符」の作曲者はスティーヴ・グッドマンとありました。70年代後半のラジオの深夜放送「馬場こずえの深夜営業」でよく掛かってましたね、スティーヴ・グッドマンの曲が。

 写真は何年か前、撮影地は鎌倉です。