5月須田塾


 須田一政写真塾の第四週に参加しているが、今月は第四週にあたる23日には別の予定があるので、今日の第三週に振替参加する。午前中、用事があり、遅れて参加。

 家を出るまえ、いったいどこで買ったのだろうか、それすら忘れてしまった古本、小山清著「日日の麺麭、風貌」(講談社文芸文庫)が机の上に積まれた本の「タワー」の下の方にあるのを発見、京都手作り市にて「服と小物ナカザワ」で購入したブックカバーにくるんで持って出る。
 読書中の本がいったい何冊あるのやら?シュペルヴィエル著「海に住む少女」は二編目の途中までで止まっている。カルヴィーノ著「むずかしい愛」は一編だけ読んで止まっている。山田稔著「太陽の門をくぐって」は一編目の途中で止まっている。下條信輔著「サブリミナル・インパクト」は6割くらいまでは読み進んで止まっている。小島信夫著「寓話」は半分くらいかな。片岡義男著「人生は野菜スープ」は最後の一編を残して止まっている。止まっていることを忘れてしまっている状態の本もきっとあるのだろう。そうだった、昨日は電車の中で岩波文庫泉鏡花著「外科室・海城発電」を24ページだけ読んだ。でも文体が古すぎてなかなか読み進めなかった。
 一昨日読み終えた双葉文庫桜井鈴茂著「終わりまであとどれくらいだろう」は、都会に住む六人の人々の一日を登場人物を微妙に交差させて描く。現代の東京で生きるということのつらさとか、登場人物ひとりひとりに襲いかかっているストレスや、決して感情移入できないような自暴自棄や欲望や暴力や悔恨や無謀が、描かれているのだろうが、それなのになんだか奇妙な愛しさも感じるのはライブ感があるからなのか。
 昨年読んだ岡田利規著「わたしたちに許された特別な時間の終わり」でも感じた同時代性の高い東京の姿をうまく描いている。東京とか横浜とか地名で言っていても、結局はそこで生きている人たちがあって東京とか横浜が出来ている、そういう都市の構成要素としての人たちが描かれている。
 話は戻って、小山清短編集の一編目「落穂拾い」を電車の中で読み終わる。すごくいいな。昭和27年に書かれた短篇。市井の小さな幸せ、陽だまりのような、ってことか。でも背景にある生きるつらさがあるからこその。つげ義春の「古本屋の少女」なんかを思い出す。この一編を読んで、すぐに引き続き次の作品を読むことができなくなり、ぼんやりいろいろ考えた。そのうち眠くなった。

 須田塾。F田さんの白黒の街スナップのなかにあった新幹線から撮られた富士山の写真などを見ながら、絵葉書のような写真というとあまり良い意味では言わないが僕はいま絵葉書のような写真が好きですね、と先生がおっしゃる。先生自身が自分の作品を日々撮る中で、機材とか興味の対象とかが移っていく、そのように先生も我々と同様に写真の中を漂流しているのが判ることが塾にずっと在籍していることの楽しさでもあるのだな、と思いつつ聞く。少し前までは21mmでものすごく接写することに興味があったが、いまは28mmで広く撮りたい、なんていう「変化」が先生にもあって、「確固たるスタイル」に縛られていないとこなんかが須田塾の「先生と共に」的な楽しさかもしれない。

 夕方より浅草橋のMAKII MASARU FINE ARTSへ。須田塾の、(私は参加していない)「街撮りコース」の方々のグループ展を二階で開催中。今日はそのオープニングパーティで、出前で届いた中華料理をたらふくいただく。S野さん差し入れの15年ものとかいう陶器に入ったしょうこう酒がすばらしく美味しい。ほとんど飲めない私はほんの一杯だけいただく。会場は20名か30名か、大勢の人が集いあれやこれやいろんな話をしている。林林さんの66白黒、金沢への旅の写真は、最近の彼の写真に共通の「旅行けば・・・」の情緒に満ちている。同じく林林さんの、京都を一緒に歩いたときの写真も、一緒に歩いた道すがらなのに全く違う街に見える。私がコンパクトデジカメで撮った京都の写真がプラスチック製の風呂桶だとすると彼の写真はヒノキ製だ・・・って我ながらすごい比喩だな。
 途中、一階で開催中の絵画の二人展を見る。一階にいると、二階のパーティのざわざわした話し声や笑い声がノイズになって聞こえてきていて、それがセンチメンタルな気分を誘う。映画「の、ようなもの」のラスト場面などをふと思い出した。
 グループ展では清水和子さんがPCのスライドショーを、賀Qハセガワさんがプロジェクターを使って同じくスライドショーで写真を見せていた。
 清水さんの写真をたくさん見たのは今日がはじめてだったが、撮るところにすごく近しいものを感じる。お話したら一日千枚とか撮るらしい。私は多くて400枚くらいが限界だから千枚はすごいなあ。植物とか建物に向けられた視線が柔らかい。
 賀Qさんのスライドショーは四つのシリーズから出来ているが、中でもSeptemberと題されたシリーズが気に入った。被写体、オートバイとか、にぐぐぐっと迫っていく。森山大道「光と影」などの影響もあったのでしょうか。

 上の写真は一昨日だったか、風の強い夜に撮ったもの。

終わりまであとどれくらいだろう (双葉文庫 さ 29-1)

終わりまであとどれくらいだろう (双葉文庫 さ 29-1)

わたしたちに許された特別な時間の終わり

わたしたちに許された特別な時間の終わり

日日の麺麭・風貌 (講談社文芸文庫)

日日の麺麭・風貌 (講談社文芸文庫)