読みかけの本が溜まる


 6時頃に目が覚めて、外を見たら、薄曇り。ぼんやりとテレビを見ている。テレビではサプリメントやら痩せるための機器やらを紹介している。通販の番組。それでリモコンでチャンネルを変えると、今度は目黒駅から林試の森公園までの散歩コース紹介をしている番組が映った。最後に万歩計とGPSとを組み合わせて、散歩データと健康管理データを記録するような携帯機械が紹介された。
 そのうちにレースの窓の向こうに見える隣の家の屋根に日が射していることに気がついた。思ったより天気が良いので、出かけることにする。トートバッグに小さな三脚、24mmのちょっとした小さなレンズをつけたDSLR、五月連休に横浜の古書店で買って松本へ行く特急電車の中で80ページほど読んだままバッグの底に忘れていたものを昨日発見した梅棹エリオ著「熱気球イカロス5号」の文庫本、ほかに財布とかSUICAカード、携帯電話、などを放り込む。
 鎌倉に着き、八幡宮の参道でマイブームのスローシャッター写真を少し撮り、そこから由比ガ浜まで歩く。海に着いたときにはもうすっかり雲っていて陽射しは消えてしまった。砂浜を西へと歩いて写真を撮って行く。フラットな光線、少しガスっているような遠景。海にいるのはおおかたがサーファーでときどき子供たちが遊んでいる。
 11時過ぎに撮影を切り上げて、ラ・ジュルネで桜海老と鎌倉野菜丼を食べる。それから由比ガ浜通りを歩いて鎌倉駅に戻り帰宅したのは2時頃だった。
 由比ガ浜通りでは、この通りを歩くときの習慣のように、公文堂書店に立ち寄った。外の棚からル・コルビジュエ著板倉準三訳「輝く都市」を拾い出す。店内の文庫本の棚から田中小実昌著「乙女島のおとめ」も。また本を買ってしまった。

 数年振りに再読をはじめたボルヘス著「砂の本」をひと月くらいかかってやっとさっき読了した。表題作の終わり方なんか全く覚えてなかったな。
 それにしても読みかけのまま読み終われずにいる本が溜まりに溜まってしまった。上記の「熱気球イカロス5号」なんかひと月のあいだバッグの底に忘れていたもので、たまたま見つかったから再読し始めたわけ。ほかに、ブローティガン著「西瓜糖の日々」は全三編のうち一編の終わりあたりで停まったまま。幸田露伴集怪談は約400ページのうち250ページあたりで停まったまま。長島有著「僕は落ち着きがない」は冒頭の20ページで停まったまま。内田百けん著「冥途・旅順入城式」は冥途が終わって、旅順入城式の二編目あたりで停まったまま。角田光代著「福袋」は残り二編が未読。小山清著「日々の麺麭」は再読を始めたがぽろぽろ拾い読みをしていてどこを読んでどこを読んでないのか不明。柳田國男著「野草雑記・野鳥雑記」は野草雑記が終わって一段落した感のまま進まず。堀江敏幸著「未見坂」九編中三編目までで停まっている。ほかにも何冊かそういうのがあるところに持ってきて、先日余白やさんの屋台古書棚から池澤夏樹著「ハワイイ紀行」を、ブックオフ多和田葉子著「犬婿入り」とハービー山口著「日曜日の陽だまり」と梨木香歩著「水辺にて」を買う。みんな100円とか105円とかだった。
 そうだったあとガルシア・マルケスの「族長の秋」が文庫本になったのを買ったのも100ページくらいで停まっている。
 読書をするのは電車の移動中や散歩に行った先のカフェとかそんなことが多い。すると家を出るときに、今日は何を読もうかな?と本を選ぶわけで、読みかけの本があっても「今日はこれの気分じゃないな、こっちにしよう」と本を変えてしまう。その結果が上記のようなことになっている。
 一度、これらを順番にちゃんと読み終えようではないか!と思うが、まあそうも行かないのであります。

 公文堂の外の棚には、1976年のユリイカ(だったかな?)があって特集がジャズはもう死んだのか?みたいな感じのものだった。たしかに1950年代60年代に大いなる変革がすごい勢いで続いたらしいから、76年時点でそういう特集が組まれていてもおかしくはない。で、その1976年から既に35年が経っていて、その35年のあいだにジャズは伝統芸能として伝えられているだけで既にとっくに変革は終わっていたことを証明したのか?いや、そんなことはなくて変革はそれ以降もあったのか?私にはよく判りません。というかどうでもいいじゃん、気に入ったアルバムが新しいものからも出てきて、それが革命的ではなくても好きならば、ということにはなるのですが。。。
 以前、ロック評論家が、
「ざまあみろジャズなんか終わったじゃないか、俺らロックは終わってないぜ」
とか言っていた(書いていた?)な。まあ馬鹿みたいではありますね。
 最近、タワレコの1000円のワゴンで見つけて買ってなんか気が抜けたサイダーみたいなのが今日のフラットな梅雨空みたいで、それがふわふわといい感じだったりもする、ズート・シムズ。「ヴァーモントの月」がいいですね。

奇しくも76年の録音でした。

ところで砂の本ってもうじき集英社文庫で再発されるようです。