謎の栞


 今日は須田塾(須田一政写真塾)第三週組の10月例会に行ってきました。このブログの10月14日に載せた、数年前に葉山の海岸で撮影した「波打ち際を歩くビジネスバッグを持った男のカラー写真」のプリントを、14日にコンデジで接写して、白黒の荒れた写真に仕上げたプリントのシリーズ、あるいは、函館や横浜で撮ったスナップ、などなど、300枚を持っていきました。先生はその中から18枚を並び順込みで選抜してくださいました。それからメンバーと先生とで、その18枚を見ながら感想を言ってくださるのですが、いつもどおりせっかくの感想をなかなか全部は覚えて帰ることができません。私の時間が終わったあとに、携帯のメモにキーワードを入力して忘れないようにしましたが、その時点で肝心なことをすでに忘れているような気になります。いつもそうです。今度は録音機でも持っていきたいものです。
 そのメモをいま見ると「タルコフスキー」「ブレードランナー、謎の栞」「病室で記憶をたどる」なんてことが書いてあります。タルコフスキーの映画は、その題名はよく知っている「惑星ソラリス」も「ノスタルジア」も見たことがない、もしくは見たことがあったとしても忘れてしまった、という状態です。ソラリスは小説を読んだことがあります。AbHAYASHIさんに薦められて読んだのです。ブレードランナーは何度も見ました。謎をさぐるような場面で、撮影された画像の一部を拡大していくと、そこに隠されていたキーワードみたいなものを発見するような場面がありました。それを先生は「謎の栞」を見つけるような場面だとおっしゃったのです。私が古い写真を、その写真を撮ったときの生々しい感覚や思い入れを忘却してしまった数年後に、ふたたび第三者的光景として自分の撮った写真を見つめて、その一部を拡大して複写する、その行為のことをそう例えたのでした。そして病室に寝ているときに、そこには室内だけの光景しか見えないけれど、そこに寝ていながら頭のなかで記憶をたどったような写真だというようなことをおっしゃっていました。
 「昭和のころの懐かしさ」を感じるという方がいらっしゃる一方で、「怖い」「世の中からすべてが無に帰して原初に戻って行くSFのような並び」だと感じるかたもいらっしゃいました。私がまったく思いもしていなかった感想としては「ロシアのようだ」というものもありました。時間とか記憶とかいう単語がずいぶん出てきました。
 誰かが集めた(とくにテーマはないけれど、誰かが集めたという共通性のある)スクラップブックのようだ、という感想もありました。
 そういう感想の多くが、作者である自分のなかに言葉でははっきりとつかめてないけれど、なにか「コンセプト」のようなことがあるのだとすると、それを言い当てているようで、参考になりました。
 ところで上の写真は選ばれなかった中からの一枚です。

 SIくんが自分の撮った写真が過去になっていくスピードがいつもより速く感じられるというようなことを言いました。そこから先生が、とあるカメラを使っていたときにそんな風に感じたことがあるような話をされました。

 この一週間のあいだに、これもまた一度も見たことがなかった「大人は判ってくれない」と、ロードムービーとして評価が高いことを最近知ったメキシコ映画の「天国の口、終りの楽園」と、およそ三十年振り二度目となる「ストレンジャー・ザン・パラダイス」を見ました。どれも素晴らしい映画でした。

 下の写真は選ばれた18枚のうちから1枚です。


天国の口、終りの楽園。 [DVD]

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