京都


 13日金曜日の夜に京都へ。京都駅から206番のバスに乗り高野へ。途中、恵文社一乗寺店を覗いてから、Tの部屋へ10時過ぎに着く。暑い日がぶり返している。気象庁によると今年の夏の平均気温が『夏平均気温:西日本 +1.2℃(統計開始以降第1位)、東日本 +1.1℃(同第3位タイ)、沖縄・奄美 +0.7℃(同第2位タイ)』ということだが、この「平均気温」というのはどうやって算出しているのだろうか?そもそも平年値というのも毎年の結果を加味して修正されているのか?・・・などとブログを書きながら疑問に思ったことを調べ出すと、書こうと思っていたことからどんどんと脱線してしまうのだが・・・なんて疑問に思うのは、最高気温だけ聞いていると、やれ40℃だとか38℃だとか36℃だとか、私が子供のころには「ありえなかった」数字で、5℃くらいは高くなっている感じがするのだが。ということでぶり返した暑さで、13日の金曜日(やれやれ、いま気が付いたのだが、13日の金曜日なのだった)京都の最高気温は35℃だった。ついでに・・・いま検索して出てきたデータから暗算してみたら、2009年〜2013年の9月13日の京都の最高気温の平均値(その日の最高気温を足して5で割った値)は約32℃くらい、30年前の、1969年〜1973年の9月13日の平均気温は28℃だ。どうも1973年の最高気温が極端に低かったようなので(21.4℃とある)、それを除くとすると30℃になって、差は2℃(32-30=2)くらいか・・・。しかし1979年〜83年の平均はやはり28℃だから、差は4℃(32-28=4)になる。こうして最高気温の9月13日だけを注目すると、ここ数十年のあいだに、3℃か4℃くらいは高い。なんだか気象庁の発表よりこういう数字の方が実感がある気がするなあ。

 寝苦しい夜。知らぬ間に寝てしまっていたが、夜の2時40分、前の道を通って行く若者が大声で騒ぐ声で目が覚める。シャワーを浴びて、歯を磨き、再び横になる。
 寝る前に、Tが先日、イタリア旅行で撮ってきた写真を見せてもらう。街中のスナップであっても、Tの撮り方は、人の配置がこうなって欲しいという「作図」みたいなことをある程度考えて、それに近い瞬間が来るのを待っているらしいのだ(もちろんそれだけではないだろうが)。その成果として、人の配置が美しい写真が何枚も撮れていて、感心する。ある写真では、手前に赤い自動車、向こうの歩道を右方向から赤い服の人が歩いてきたから、その人がここに来たらシャッターを押そうと待っていたら、ちょうど左からも赤いバイクが走ってきてドンピシャの構図になった、みたいなことも言っていた。

 14日、私にしては遅く目覚める。高野の交差点近くの、アカツキコーヒーでトーストを食べ、珈琲を飲む。京都に来て一乗寺に泊まると、朝食は喫茶カワタレで食べるのが習慣だったが、カワタレが閉店してしまったので、そういう些細なことでも途方に暮れてしまっていたのだが(仕方がないから前の晩にコンビニでおにぎりを買っておいたりしていたのだが)、かもめ食堂のようなアカツキコーヒーに初めて行ってみて、何も音楽がかかっていない清楚な空間が居心地が良く、これから京都に来たらここで朝食を食べることにしよう、などと思う。

 喫茶店やカフェ(この違いはなになのか?)で、珈琲メニューにある「ブレンド」は店主オリジナル配合の店主おススメ味ということだと理解していいのかな?若いころなんかは気取ってしまっていて、ブレンドはパスして、あれやこれや、実のところは味の違いなんか対して判らないのに、産地を指定して頼んでいたものだが、知ったかぶりするのも面倒な年になると大抵はブレンドを頼むようになり、この朝のアカツキコーヒーでもブレンドを飲む。飲みやすい。

 高野から川沿いに下り下鴨神社まで歩く。伊勢神宮遷宮の年ということが関係しているのか、下鴨神社に来ている観光客がいつもより多い気がする。お日柄が良いのか結婚式が次々と予定されているらしく。境内で写真屋さんが大きな三脚を使って新郎新婦を撮っている。初宮参りの家族もいる。なんとなく境内がわさわさした感じがする。

 叡山電車出町柳駅近くにある古いアパートの二階、217号室にあるというnot pillar books(http://notpillar.com/ ) 
を訪ねるが、12時40分ころでまだ開いていない。これは私のミスで開店時間は13時だったのだ。ここはzineを中心にした品ぞろえの本屋である。食事後に再訪する。店主は平日は別のお仕事をしていて土日のみここで本屋さんを開いているとのこと。何冊か面白そうな写真集を教えてくれるが、旅先から大きな重い本を持ち帰るのは億劫でありなかなか買うことが出来ないのはいつものこと。それでも、帰りに買った本で鞄が膨れてしまうのもいつものことなのだが。
 勧めてくれたうちに金沢のSLANTという21世紀美術館近くにあるギャラリーが出しているタブロイド判の(http://www.slant.jp/store.html石川直樹の写真集(と言っていいのかな?)を購入する。大きいからずっと持ち歩くのが大変なので、出町柳のコインロッカーに入れる。

 昼食は、銀閣寺近くの古書善行堂より京大よりにある「くらり食房」で、美味しいと聞いたハンバーグを食べた。ハンバーグを積極的に選んで注文することなどずっとなかった・・・ような気がしたが、よくよく考えるとつい数週間前にファミレスのジョナサンで、フォアグラが乗っている限定メニューのハンバーグを食べたことがあったな、と思い出す。ジューシーで美味しい。私が小学生だった1960年代後半か、住んでいた平塚駅近くにあった不二家のレストランでハンバーグを食べるのは、たまの贅沢だった。父は不二家でハンバーグを食べるまでそういう食べ物があることすら知らなかったと言っていた、ように思う。

 百万遍交差点は快晴で、ぶり返した猛暑の中をTシャツでサンダル履きの学生たちが大勢行きかう。百万遍を舞台とした「酒はなめるように飲め/酒はいかに飲まれたか」(http://www.groupsure.net/books/drink.html)というSUREの本は、2005年か2006年くらいに、そのとき初めて行ったのかもしれない恵文社で買ったものだった。そして、その本を持って相模湾沿いのサイクリングロードの途中にあるウッドデッキの展望台のところで寝転がって読んだ。どの本をどういう状況で読んだか、っていちいち覚えていないけれど、それでもときどきは覚えているものですね。この本は学生時代の気分や気持ち、あるいは人々の裁量がいまより大きかったころの選択から生まれる人と人の擦れ違いや共感、といったことが書かれていたような。細かいストーリーは覚えてないのだが。また読み返してみよう。

 京阪で三条。徒歩で近代美術館へ。開催中の「映画をめぐる美術」(http://www.momak.go.jp/Japanese/exhibitionArchive/2013/399.html)を見る。この展覧会の感想は後日に書くかもしれない。

 歩いて新しく出来た写真集や建築関係の本を集めた古書店Books & Things(http://andthings.exblog.jp/)へ。町家を使った本屋で、呼び鈴を押し、靴を脱いで上がる。店主が奥から出てきてくださり、本棚を見ているあいだに、その場に控えている。こちらは具体的に欲しい本があってそれを探しに来ているわけではないので恐縮する。緊張する。それを打ち破ろうとしてジョエル・メイエロウィッツの写真集のことやら、飾ってあるポールフスコの写真のことなどを話題にして話しかけてみるが、緊張が解けないままだった。ま、私の性格の問題で。すごく洗練された空間だった。

 古川商店街の「喫茶feカフェっさ」に行ってみたら店が変わっていた。あとでTに聞いたら、なんでも店主が六曜社に行った(戻った?)らしいとのこと。後にできたペチカと言う店には入らないで、ずんずん歩く。暮れ時の四条河原町あたりはものすごい人出。今日から三連休である。交差点にある何とかいうビルの五階か六階にある書店に立ち寄る。来る途中の電車の中で、読んでいた後藤正治著「リターンマッチ」を読了。ついで小川洋子の「ブラフマンの埋葬」を読んでいるが、薄い本なのですぐにも読み終わりそう。活字中毒者の中毒症状で、帰りの新幹線で「ブラフマンの埋葬」を読み終わってしまったらどうしたらよいのか!という「恐怖感」に襲われてしまったというわけだ。買ったのは鶴見伸輔の「旅と移動」。旅先での選択ってことなのか。


 同時代ギャラリーまで歩く途中で、ギャラリー古都と言う場所で須田塾仲間の志野さんの写真展をやっていることを思い出し、閉廊ぎりぎりの時間だったが滑り込みで行ってくる。上記の「旅と移動」ではないが、まさに移動する視点の写真展で、そういう移動の視点が志野さんの魅力だったのだと、あらためて気づかされる思い。

 同時代ギャラリーはすでに終わっていて入れない。地階にある「アンデパンダン」で自家製マリネとトルティーヤを食べてこれを夕食とする。カウンターに一人座って本を読み進む。他に一人の客はいないし、ほかに私のような年齢の客もいなかったかもしれないな。

 そのあと、京都に来ると一度は寄ってしまう「エレファント・ファクトリー・コーヒー」へ。いつものブレンドの5番を頼む。いつも通り干しブドウのチョコレートが三粒付いてくる。ボブディランが流れている。カウンターの隣のおじさん(同年輩か?)が、Just Like A Woman のJust Like A Woman のところを口ずさむ。

 先斗町の真ん中あたりにある公園と駐車場に挟まれたあたりで、ギターの弾き語りのおじさんの歌を三曲ほど聞き、小銭を少々投げてくる。小さなギターの音と小さな歌声がひっそりとしていて、通過していく観光客にひそかにしみ込んでいくようだった。レゲエの曲を歌っていたが、聞いていた三曲目はビートルズの「愛こそすべて」。

 三条の河原にはグループがたくさんいてざわざわしているが、それでも川面を見つめるカップルはやはりいて、中には感極まって(?)熱き抱擁と接吻の方もいらっしゃるのだった。

 京阪三条出口あたりにはおっさんのギター+ベース+ドラムスのジャズトリオ。アントニオ・カルロス・ジョビンの「波」、テーマのメロディはよく覚えているものの曲名が出てこないのが何曲か続き、たぶんだけど「ジー・ベィビー・エイント・アイ・グッド・トゥ・ユー」になる。おっさんトリオの演奏に足を止める人は多い。そしてしばらく聞くと、すっとまた消えていく。同じようなおっさんの酔客が何人か、もっとも熱心な聴衆のようだった。

 明日の15日は台風の予報なので、予定を繰り上げて、午前には茅ヶ崎に戻ることにする。なので今回の京都旅行はこの一日が全てです。


下鴨神社


百万遍(上記の本文にはTシャツとサンダルと書いたが、そうでもないね)


先斗町のギターマン


三条大橋際のギタートリオを聞く人たち


くらり食房階段上の花瓶