芸術新潮がつげ義春の特集を組んでいる。
中学3年のときに通っていた中学校のすぐ近くに平塚市図書館があった。中学校から北に、タイヤ工場と駅をつなぐ引き込み線を越えて、数年前にそこに展示されたD52型蒸気機関車の脇を通って行くと、ほんの数分で図書館だった。引き込み線は中学校の裏でちょっとしたヤードになっていて、駅からヤードまではDD13型ディーゼル機関車が入ってきてたように思うが、ヤードから工場のあいだは、車両の幅や長さの関係なのかとても小さな、たぶんその引き込み線専用の古そうなディーゼル機関車が使われていた。北校舎の廊下から、ときどきその小さな機関車が走っていくのが見えた。それは滅多に走っているのを見ることができなかったから、見た日は運が良いような気持ちがした。あのころのことを思い出すと、この機関車のことのほかに、なぜだかカシアス・クレイというボクサーのことや、ミッシェル・ポルナレフというフランスの歌手のことが一塊に出てくる。
そして学校の帰りに立ち寄った図書館で、ふと手にしてページをめくってみたつげ義春の漫画から受けた衝撃といったらなかった。紅い花、ねじ式、山椒魚、の三篇をそのときに読んだ(ほかにもなにか読んだかもしれないが)ことは鮮明に覚えているのだ。とくに「山椒魚」を読んだ時の恐怖感というのか、いけないものを見てしまったあるいは見せられたような衝撃はすさまじいものだった。
芸術新潮では「海辺の叙景」の原画が大きく載っていて、この話は大学生のころに文庫になったつげ義春作品集で読んで、「李さん一家」などとともに好きな話なのだ。懐かしい。
芸術新潮には漫画に使われた元写真にあたるつげ義春のスナップ写真もずいぶんと掲載されている。
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2013/12/25
- メディア: 雑誌
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