はるか夏


 もう五十回以上も夏を過ごしてきているのに、こうして冬のある日に夏のことを思い出そうとしても、それは言葉で理解しているだけで「五感としての夏の記憶がちゃんとあって自信を持って思い出す」ということが出来ず、違う季節はいつだってあやふやだ。今とは違う季節の写真を見ていても、だからそれは遥か彼方に懐かしさとともにかすんであやふやにあるだけだ。