異世界


 朝9時半からTBSテレビで始まる番組の冒頭のコーナーは本に関するもので、今日は芥川賞を受賞した小山田浩子という作家の特集だった。作品名は「穴」。本人のインタビューのあとにスタジオで司会の・・・あの爽やかな男優さんはなんて名前だっけ?出てこないなあ・・・その方が、感想として「自分の周りの世界がいつのまにか異世界になってそこに包まれているような小説」「カフカは自分が変身してしまっているが、この作品は周りが変じていく」といったようなことを話していた。書評コーナーの解説担当の方なんかよりよほど参考になる意見だった。あ、彼は谷原さんですね。
 最新号のアサヒか日本かどちらかのカメラ雑誌に、写真がうまくなるとはどういうことか、といった特集があって、そのなかにハービー山口氏や北井一夫氏がインタビューを受けている記事があったが、そのどちらかの方だったか、それ以外の方かもしれない、といういい加減さですいませんが、「日常の中に非日常を見つけるのが写真家」というようなことを答えていた。ハービーさんだったような。(2月6日追記)今日、あらためて日本カメラを見たら、その特集にはハービーさんはインタビューを受けておらず大西さんと北井さんだった。しかもそのお二人はどちらも、そんなことを言っていなかった。というわけで私がどこで誰の発言を読んだのか、不明です。でもどこかでそういうことを読んだのは確かだと思う。

 須田さんはよく日常のなかから非日常をみつけてそれを撮る達人だと言われているようだ。ちょっとWIKIってみると須田一政は『日常に潜む異常を切り取るようなスナップ写真を得意とする。』といきなり出てくる。昨秋の都写美のトークショーだったかで、須田さんはそのことについて「よくそう言われるが、別段、そういうことを狙って撮っているわけではない」と答えていたと思う。
 この写真は茅ヶ崎の花火大会で撮ったもので須田さんはこの写真やこのときに撮ったほかの写真を見て、それらには花火そのものはほとんど写っていないこともあってだろうが、花火ではなくなにかほかのものを迎えに出てきたみたいで怖いです、とおっしゃった。あるいはよく家が写っている写真を見て、中でなにか殺人事件とかの事件が行われている現場のように見える、ともおっしゃっていた。
 日常なんて日々の常みたいだけど、実はもろくあやふやでどういう条件がそろえば「常(つね)」と言えるのかわからない。習慣という単語もそう言える条件がよく判らない。そういうもろさやあやふやさに目をつむらないでいれるかどうかが小説家にせよ写真家にせよ、ある種のなにかを生み出せる人の素性に必須なのかもしれない。
 でもって、「穴」を買ってしまったが、読んでいるのは長嶋有の方で、この小説は有さんにしては隠された告発みたいなことや、隠されたどうしようもない孤独感とか、日常のもろさをえぐっている感じがする。

穴

問いのない答え

問いのない答え