野口里佳展 夜の星へ トークショー聴講


 渋谷のシアター・イメージ・フォーラム映画「写真家ソール・ライター」を観る。次いで品川のキヤノンギャラリーSで野口里佳写真展「夜の星へ」。ギャラリートークも聴講。
 家族のMとSと合流後、五反田のグリルFで洋食。

キヤノンギャラリーSで開催中の野口里佳写真展「夜の星へ」を鑑賞し、合わせて開催された野口里佳×光田百合×よしもとばななトークショーも聞いてきた。トークショーでは大抵、ラストの10分か15分、聴講者からの質問を募りそれに作家か答えるような時間が取ってある。今日もそうだった。質問したいことが二つあったけれど質問しなかった。誰かの質問が自分の疑問を代表してくれることはあまりない、誰かの質問のおかげで新しく目が開かされるようなことも滅多にない、なんだかほとんどつまらない。ってことは、私の質問は他の聴講者にはつまらない。でも質問すれば自分の疑問は解決出来るかもしれない。質問コーナーは他の聴講者にも新しいインプット(今風の言い方でイヤなんだけどじゃあ、なんて単語が良いのかすら浮かばない)があることを期待して企画されているのだとすれば、質問する人もこれは公開トークショーなのだからその意図を考えた上で、私のこの質問は他の人にも得るところがあるに違いない、と言う程度の吟味と言うか考察?違うなぁ、選考?もっと違うなぁ、配慮?でもないなぁ、いずれにせよ、ここでこの質問をして何かの価値(ってのも大げさだけど)のある「いい」質問をするべきなのだろう。そんな風に質問する人と質問するか迷っている人は多かれ少なかれ考えている。なのに大抵の質問はつまらなくてイライラさえする。
こんな風に考えて質問しなかった。いや、その場ではこんな正確、と言うのか、論理だった考察の結果として質問を取り止めた訳ではないだろう。こんなことが言い訳めいて心の奥にあるから質問をしない。まるで子供じゃないか。でも繰り返すがこの日は質問を躊躇してしまった。今まで何回かこう言うところで質問をしたことがあったが、他の聴講者は私の質問を「いい質問」とは思ってくれなかった感じがしたものだ。
この作品はハーフサイズカメラ(もしかしたら作品「不思議な力」を撮った野口のお父様のオリンパス?)で、ベルリン在住の野口が仕事場から自宅に帰るときにいつも乗っているバスの車窓風景を、36枚撮りのハーフだから約72枚(実際には76枚撮れたそうだ)の一本勝負。ある一日だけに限定して撮った写真とのこと。少し曇ったバスの窓越しの風景は紗がかかったようになり、暗いなかに信号やヘッドライトやネオンサインや街灯の彩りの光が滲んで写っている。あるいは隣に止まったバスの中の客や歩道に佇む、信号待ちの人だろうか、歩行者が写っている。もちろんこれらの人物も曇った窓越しにぼんやりと。
野口は今まで作品を作るときにはどこに行けば自分のイメージを具現化出来そうかを考えてその場所を探して出掛けていく、積極的に撮りに行く、そうやって来た。
これ、トークショーで話されたことを書いているつもり。だけど、伝言ゲームの常としてうまく伝えられず、私の主観でねじ曲がるかもしれないのはお許しを。
それを今回は「受け入れる」スタンスで撮った。そこが今までとは違う試みだと言う。決められたバス路線、フイルム一本と言う自ら課した制限、そうして撮られた76枚からの選抜が展示になっている。
そこで私が質問したかったことのその一。
『この作品を撮るとき今のお話を伺って私なりに解釈すると「委ねる」ことへの軸足の移動があったと言うことだろうと思いました。そうであればどこまで委ねたをもう少しお聞きしたい。例えば夜の星へ、と言うタイトルや作品イメージがまずあって、だから、夜に撮ろうとか、帰りのバスの時間が暗くなる季節にしようとか、あるいは作品を故意にぼんやりさせるべく窓の曇ったときを狙おうとか、そう言う条件は選んだのか?それともそれも委ねた結果の、言い方が失礼かもしれないが偶然の産物の要素が強いのか?フイルム一本と言うのも何かそれくらいが作品作りに良い方向を与えると自覚した制限でバスの経路を知った上なのでまだあそこをこれから走るからなん駒分かフイルムを残しておこう、と言った作戦もその場ではあったのか?』
ここにこう書くといかにも他の聴講者にはつまらなそうな質問内容で、あの場で聞かなくてよかったなとも思うが、でも気になる。この質問をなぜしたいのか?とさらに考えると、そもそもなんでそう言う受身、委ねること、制限を決めること、をやりたかったのか?を聞きたかったのだろう、私は。
質問その二。
『作品タイトルの「夜の星へ」の星とは何を指しているのか?このベルリンの町も地球と言う惑星上にあると言うことを意識したことの表明とか、滲んで写ったカラフルな光が例えば天文学図鑑のような本で見たような、遠い宇宙のはての星雲団のようなことを思わせるからここで使われた星は地球ではなく夜空の星をイメージしているのか?』
この質問二はふと感じた疑問。そのどちらも含むと言うことなのだろうな、と言うのが私の勝手な推察。
これらの質問は上の方にグダグダ書いたように、しなかったので答えは不明のままです。