ガラス窓


 京都にもう一泊して、土曜日の国民の休日には秋の特別公開をいくつか。六道珍皇寺小野篁の木造の像など見上げる。袖が膨らんでいるのは井戸から地獄へ向かったり戻ったりするときに水の中で浮かぶためだと、バイトの大学生らしき解説の男の子が解説している。ほかのも建仁寺なども。
 おかる でしっぽくうどんを食べる。満員の他の客は、たぶん全員がカレーうどんを食べている。こちらは、きつね や のっぺい にすればよかったとちょっと悔やんでいる。が、しっぽくも美味しい。柔らかい麺が優しい。それにしてもこの店、ずっと前から、そんなにカレーうどん推しだったかな?
 ちんぎれや、何百年も前の布を使って小物を作っている店で、名刺入れを買う。いつも使っていた百円ショップのアルミ製?の名刺入れが紛失。それで。
 百万遍知恩寺で古書祭をやっている。秋空の下、競りも行われている。だれだれの全集、全十巻のうち七のみ掛け、五千円から、などと競り師が声を掛けて始まる。おおむねおじさんで構成されている数十人が楽しそうに参加している。どれも必ず買い手がつくから競り師の初値は妥当な安値から始まるのだろう。五千円から七千、一万と上がり、例えば一万二千円で落ちる。
 何冊かの本を捲ってみるが、買わない。
 そこから歩いてヴォーリスが設計した駒井家住宅をはじめて見学。秋の午後の光が淡くさす二階の部屋は、そのまま記憶を誘うように穏やかだった。