確認すること

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退院後もしばらくはいろいろと暮らしの制約があるものの、ウォーキングはいくらでもやった方がいい、と医師は言う。右の脇腹が若干ひきつるものの今日もウォーキングに出る。昼少し前。Tシャツの上にカーディガンを羽織っていたが、すぐに暑くなった。着ていたTシャツは2017年くらいかなジャクソン・ブラウンが来日公演をしたときのツアーTシャツで、三枚目のアルバムLate For The Sky、夜の室内に電灯がついている住宅とその前に停められた古い自家用車のジャケット写真がそのままTシャツにプリントしてあるものだ。一般的にツアーTシャツはダサいものと言われているらしい。風が強い日が多い。雨の日も晴れの日も、なんだかいつだって風だけは強く吹いている。風にあおられて、夏草や木々の緑が常に揺れている。揺れると葉裏が見える。葉裏は葉の表よりたいていは白っぽいから、銀色に煌めいて見えるのだった。この写真の川沿いの路だったか、ここに至る手前の坂道だったかで一人の同年配の男性、やはりウォーキングをしているらしい男性とすれ違う。男性の視線が瞬間だけど私のTシャツの絵柄に絡みついたから、たぶんジャクソン・ブラウンのLPジャケットの図柄だと知った人だったのではないだろうか。川沿いのこの道を歩くのは3週間ぶりくらいかな、4週間かな。そのひと月くらい前に来たときには、すでに燕は飛んでいたものの、鴨の仲間の鳥だって白鷺だってたくさんいたが、今日は見当たらない。種類によっては北へ渡り、種類によっては川辺の草の中で子育てのために隠れていて、種類によってはもともとこの時間には見えないところにいるもの、なのだろうか。ちょっと歩きすぎて疲れてくる。家の周りを家を中心にぐるぐると歩くコースであれば疲れたら早々に帰宅できるのに、なんでこんなブーメランの軌道のようなコースにしてしまったのか?歩けるスピードが落ちたので木陰のベンチに座ってしばらく息をついた。ベンチから川沿いの道に戻る細い道を上ると向こうから犬を連れた人が降りてきた。道は細すぎてすれ違えないが犬を連れた人が脇によけてくれる。犬も脇によけてじっと待っている。ありがとうございます、と飼い主と犬の両方に頭を下げた。ジャクソン・ブラウンのこのアルバムの最後に入っている「Before The Deluge」の和訳をちゃんと読んだことはないが、たぶん富や便利をもたらす技術の発展の向こうにとんでもない大事故が起きるようなことを警鐘している感じだ。ウイルスのパンデミックもこの歌に比喩された事例の一つなのかもしれない。そんな歌詞の中にLet The Music Keep Our Sprit Highというところが出てくる。そこだけよくフレーズとメロディを覚えていたから頭の中で繰り返し歌う。曲がフェイドアウトしていく辺りでたぶんデビット・リンドレイが弾いているフィドルが旋律を取るところがある。そこのフィドルの旋律も頭のなかで何度も再生する。

帰宅してiPODに録りためたものやSpotifyから流れる音楽ではなく、久々にCDをちゃんと聴こうと据え置き型のCDプレイヤーにチック・コリアのCDをセットしたが、ディスクエラーで再生ができないのだった。だいぶ前に買ってあったCDの読み取りレンズをクリーンにするためのクリーニングディスクがあったので、それを一度かけてみる。まだ駄目だったので、もう一度かけてみる。するとCDがちゃんと認識されるようになった。そこでやっとチック・コリアのCDを再生出来た。そんなに大きな音は出さない。音楽を流しながら文庫本を読み進むがすぐに眠くなる。オリジナルのLPにはその曲は収録されていないのにCD化されるとLPには採用されなかった演奏(別テイクや別の曲)も収録されていることが多い。本当はこういうボーナストラックはオリジナルのアルバムにはないのだから、別ディスクに分けるなどして、オリジナルアルバムはオリジナルアルバムとして完結した方がいいんじゃないか?それがアーティストの表現をちゃんと受け止めるということで、ボーナストラックはジャズ史の学術的分析かなにかを試みるときだけでいい・・・とか思うが、そのボーナストラックにオリジナルには入っていないスタンダード曲のコンファメーションが入っていて、この演奏がとてもいいのだった。学術的意味とは関係なくいいのだった。

なんだか一日が通りすぎるのが早く感じる。入院して退院してもう少しさきまで会社を休んでいる。仕事をしていると、とある案件が日々変化したり対応したり節目節目となる会議やプレゼンがあるから、日々の進捗とかが見えやすい。日々が自分の制御下にある感じになれる。入院して退院するまでは予定がぎっしり書かれたスケジュールに沿ってしっかりこなしてきたから一日が区切られてわかりやすかったのが退院後になり急に、あまり起伏のない時間が早く通り過ぎる感じがしてしまうのだった。

コンファメーションはチャーリー・パーカーの作曲だが、なぜこの「確認」という意味の単語が曲名になっているのかは不明らしい。でも大事ななにかを見失わないように、確認をしていかなかないと、一日はどんどん過ぎて行ってしまいそうだな。

今年の夏に使うサンダルを買うことにしてKEENのとあるモデルをぽちりました。サンダルなんて数年ずっと使っていたから新調するのはだから数年ぶりだ。

Late for the Sky

Late for the Sky

  • アーティスト:Browne, Jackson
  • 発売日: 2014/07/29
  • メディア: CD