追悼デヴィッド・リンドレー

 3月6日月曜日、夕方ヤフー・ニュースを眺めていたら、アメリカのフィドルやスライドギター等のマルチ楽器奏者デヴィッド・リンドレー氏の訃報が載っていた。たぶん、80年頃に何度か来日したジャクソン・ブラウンのコンサートや、90年代にはライ・クーダーとリンドレーのファミリーツアーのようなアット・ホームなコンサートで、彼の演奏をライブで聴いたことがある。ジャクソン・ブラウンの3枚目のアルバム「レイト・フォー・ザ・スカイ」ではリンドレーの演奏が際立つ。B面ラスト(この言い方がすでにLPレコードだ!)のビフォー・ザ・デリージュという、未来への警鐘なのか、文明の破滅というのか、自然を利用することの不遜さへの天罰なのか・・・いかにも難解で社会への告発を歌詞に込めるジャクソン・ブラウンらしいプロテスト・ソングがある。歌詞の難解さと裏腹に、演奏やジャクソンの伸びのある声(彼のさらさらした長い髪とイメージが合致している声!)はウェスト・コーストの乾いた清々しい光に満ちた明るさも纏っていて、いかにもあの70年代のアサイラム・レーベルらしい音楽だ。ところでちょっと調べたらジャクソン・ブラウンは今月に来日予定があるようですね。その曲の、エンディングに向かう演奏でリンドレーのフィドルが流れるんだけど、その演奏がなんだかずっとずっと永遠に向かって喜怒哀楽を全部背負って音楽が飛んで消えて行くようで、20代に(もしかすると10代かな)この曲を聴いたとき以来、私のなかではリンドレーの名前とともにずっと忘れない曲というか「曲の一部」なのです。合掌。

 そのニュースを読んだのがきっかけで、ジャクソン・ブラウンやリンドレーやラス・カンケルや・・・そういう人たちのウェスト・コーストのSSWをよく聴いていた80年代90年代、その頃に自分が撮った写真のモノクロネガフイルムをちょっと覗いてみた。覗くというのは、もうほんとネガがたくさんあるから、適当に選んだネガファイルからさらに適当に選んだネガを見るという偶然に選んだネガを「覗き見る」という感じだから。それは91年の6月頃に撮った写真だった。ほとんどが自分で現像したTMAXかトライXのネガだが、いちぶCN41カラー現像タイプで現像できるモノクロフイルムで撮ってあって、そういうネガはなんだかピンクっぽく色が付いていた。接写して諧調反転をしたらそのピンクが緑色になった。いちどモノクロモードにして緑を抜いたバージョンも作ってみたが、なんとなく緑のまんまがいいかな、と思ったのでそっちを載せました。

 たぶん横浜スタジアムの近くにあったバーで撮った写真。仲間と中華街で夕飯を食べた帰りにでも寄ったのだろうか?ジュークボックスがあって、曲を選ぶと機械のなかでその曲のシングル盤レコードが自動的にターンテーブルに運ばれて曲が流れだした。ビリー・ジョエルの「This Night」が流れたことがあるのをなんだか妙に覚えているな。途中でベートーヴェンの「悲愴」のメロディが使われる曲。きっと「この曲はサビになるとベートーヴェンになるよ」なんて知ったかぶりして言ったんじゃないかな。かっこわる・・・