土曜の午前

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土曜日の午前、隣の駅近くの知らない路地を(予約した映画のはじまる時刻までのあいだ)一回り歩いてみると、ありふれた住宅街が現れて、でも本当はこれを「ありふれた」と思うのは記憶とか価値観(というか自分のなかに出来上がっている定型)と参照しているだけで、そんな風に感じてちょっと優しさというのか安らぎを感じる場所は、そこここにあるわけでもないだろう。ありふれたと感じるのはありふれていないからで、だから積極的な好意が生じる。このあと、立ち止まって写真を撮っているわたしを赤いシャツを着た初老の男性が追い越して行った。

隣の駅のモールに入っているグリーンレーベルで黒いステンカラー風のコートを羽織ってみる。読書はここのところまったく進んでいない。

人がこころの中でも思っている恐れや願いや思い続ける強さ、勘違いや妄想、夢やあきらめや焦燥。気持ちは言葉に変換すると自分自身でも不確かでよくわからなくなる。さらに体裁やら遠慮やら羞恥やらが加わり。黙っていることを選択するのが強いか弱いかは紙一重で。そんなことをとぼとぼ歩きながら思ったりする。

土曜日曜がはじまった土曜の午前は良き時間。