月が昇り、陽が沈む

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 月の出17:42、日の入り18:15。低い雲があり、17:42過ぎても満月は見えなかった。一方、ずっと雲に覆われていた西の空の雲が切れていき、富士山と太陽が姿を現したから、ずっと西の空を眺めていて、陽が沈むのを見届けた。それから振り返って東の空を見ると、たなびく雲の向こうに満月はもうだいぶ高くまで上がっているのだった。

 休日だと言うのに、朝は五時に目が覚める。ひとしきり横になったままスマホでニュースやらなにやら眺め、また眠った。起きたら八時になっていた。曇天で寒い。もう着ないだろうと思っていたネルシャツにウールのカーディガンを着て、さらに、冬のあいだ室内が寒いときによく使っていたモコモコのベストまで重ね着した。昨晩このブログに書いたから、本棚の一部、同じ段の前と後ろの二列にずらりと並んでいるCD、それがさらに四段分もある、その中から昨晩のブログに書いた曲の入ったCDを探し出すのに、30分くらいは掛かってしまった。見つけて、一回再生して、それで十分だった。

 髪が伸びすぎているから理髪店に行きたいが、曇っていて寒そうで、部屋を出る気が起きなかった。堀江敏幸の「オールドレンズの神のもとで」を読み進むが、どこか集中できないまま、それだけ着こんでも、まだ少し寒いなと思いつつ、手から文庫本がずり落ちて、うたた寝をしてしまうのだ。

 午後四時頃になり外はやっと晴れてきた。しばらく窓から外を見ていたら、歩いて行く人はジャンパーを着こんでいる。それを見て、私も(モコモコのベストは脱ぎ)ウールのカーディガンの上にステンカラーのコートを羽織り、カメラを持って外へ出る。思ったより風があり、思った以上に寒かった。車に乗って出発して最初の信号で停められたときに、寒くて風があり、雨上がりでもあるから、遠くまで景色がきれいに見渡せる気がして、行先を湘南平(という神奈川県の平塚市と大磯町の境界あたりにある丘陵の上の公園)に定めた。道はずいぶん混んでいた。西の空に雲があり、それが広がり、太陽が隠れそうだ。そして湘南平に着いたら、しばらくだけ晴れていたが、すぐに曇ってしまった。それでも新緑の山や、平塚市の住宅地の真ん中を直線になって突っ切っていく新幹線を眺め、写真に撮り、名が判らない鳥の大きくきれいな声に耳を澄ませた。

 東の海や空を見渡せる場所にひとつだけ置かれているベンチにいる恋人たちが写真を撮りあっていた。新緑のなかに、八重桜と、もっとずっと濃い色の花を付けた木もあった。湘南平の片隅に滑り台とブランコの置かれた一角を覆うように大きな木があって、夏の朝にその逆光の木を見ると、南の国の木のように錯覚する。私は、ある夏の日の朝にその木の写真をそこで撮っているからそんな風には思わなかったけれど、その写真を見た人がそう言ったことがあった。その大きな木に小さな葉が芽生えているようだが、まだ出たばかりの赤銅色なのか、幹の色に溶け込んでいて、よく見なければその新芽に気が付かない。展望台のてっぺんにいる人影を見て、私も階段を登る。丹沢の山々の、その山並みにまつわりつく雲が美しい。遠くの東京の方や北の町(厚木の方か?)は日が照らしているから、そのうちに雲が切れるかもしれない。寒くても少し待ってみようと思ったのだ。それで日の入り時刻を調べていたら、今日が満月だとわかった。

 帰り道、ブラックの缶コーヒーを飲んだ。飲む前に熱いくらいのその缶で指先や掌を温めた。少しだけ温まった指で、空中に仮想キーボードを起き、短い文章を打つようにして動かしてみる。

 それからハンドルに手を置き、ゆっくりと車を発進した。