通り過ぎる荒野

 23日木曜日、仕事仲間四人で日本酒&魚料理の居酒屋で19:00から22:10まで飲み会。ここひと月くらいで四人までの飲み会がぽつぽつと復活してきた、良きこと。
 飲み会の前に少し時間があったので駅ビルの書店に行ってみたら閉店のお知らせが出ていた。文庫本コーナーを見て回り、読みたい本が一冊見つかったが、まだ読みかけの本がバッグの中にあり、家には未読の積読タワーがあり、そこにもう一冊加えてどうするんだ?と思い、購入を踏みとどまった。本屋の一つ下の階はユニクロだった。一周りしてここも何も買わずに、エスカレーターに乗って地上階へ。
 駅前の広場の端っこでものすごい金切り声で若い女が男を罵って、蹴飛ばし、手にした財布で顔を殴った、でも男は平然としている。すると女の財布から何枚かの紙幣がこぼれ落ちた。見ていると男も女も冷静にお札を拾って財布に戻した。ところが拾い終わると、また修羅場が始まった。駅前の交番からお巡りさんが出てきて様子を見ていたが、なにも介入しなかった。今日あたり日が沈むのは一番遅い日だ。
 写真は近鉄線から撮った奈良の平城京の跡地?の写真で少しづつ復元が進んでいるのだろうか。暮れなずむ時間にだだっ広い中に、こうして復元された建物だけがあると、建物が無いときよりももっと、ここに昔、宮城があったのに今はもう荒野だ、という無常観のような気持ちが持ち上がる。電車の中にいて通り過ぎるから安心だが、今あそこに一人でいて、全速で走る特急電車が通り過ぎ、風が草を揺する音だけに囲まれたら、ぞっとするかもしれない。内田百閒のタイトルを忘れたが狐に騙される話があった、そういうことがあってもおかしくないと思った。そうか、それこそ今は荒れ地でも昔の人達の声が風に乗って聞こえてくるような不思議がいくらでもありそうなのだ。
 それにしても特急電車の速度が異様に早い気がする。わたしはどこへ向かうのだろうか?