有楽町

 若い頃、80年代90年代、一緒に写真を撮りに行ったり、彼の家にレコードを聴かせてもらうために遊びに行ったり、会社帰りにどこかに食事に行ってとりとめのない話をしたり、都内の中古カメラ店を彼曰く「パトロール」と称して珍しいものが出ていないかを定期的にチェックして回るのに同道したりした入社同期の友人がいて、その後00年代以降はあまり一緒に遊ぶことはなくなっていたが、今日は銀座松屋で中古カメラ市が開かれているという、それを冷やかし半分に覗きに行こうということにして、実に久しぶりに会い、数時間話してきた。

 詳細な計画案をここに書くのは憚られるが、誰も見向きもしなくなった1930-50年代のある種のカメラ(こう書くからには135フィルムでもブローニ120/220でも大判でもないですよ)を二束三文で買い集めて、それを再生しようとしているらしく、ノウハウもなにもないから物を分解して構造を学んで理解したり、足りないものは入手可能なものから手を加えて自作したり、そうやって、過去の画質(いまの時代から見ると低画質)で、いまの光景を記録することを目指している。彼の話や計画を聞いていると、いつも楽しいし、刺激を受ける。

 9月も4日となり、相変わらず真夏と変わらないような30℃を越える暑さで日差しも強い。子供のころによく紫外線のピークは8月ではなく9月だと聞いたことがあったが本当の話なのだろうか。漂ってくる草木の匂いとか(昨日田んぼの中の道を窓を開けて自家用車で走っていて稲穂の香りを嗅いだ)雲の高さとか虫の声とか、日暮れ時が早く来るようになったという時間感覚とかで、同じ気温や湿度でもたぶん季節が違うことはわかるんだろうな。

 ポッドキャスト番組オーバーザサンで無人島に持っていく10の物を挙げよと言われたらなにを挙げるか?というお題にリスナーがメールをして面白おかしく番組が進む。細かいこと言わずにノリで答えるわけだけれど、その無人島の気象環境や自然環境、季節、見つけてもらえる確率の有り無しや、その近道、などの「無人島の条件」によって挙げるべきものが変化してしまうから、そこを定めて欲しい、と聞きながら思ってしまい、そんな自分はずいぶんと四角四面で嫌な奴だなと思った。模範解答があるとすると衣食住を満たし続けるための道具にプラスして誰かに自分がここにいるとアピールすることが出来る道具、ということになるのだろう。

 カメラはそれに入るだろうか?入らないだろうが、やっぱり持っていきたいですね。充電が切れたら撮れなくなってしまうからデジカメより機械式カメラの方が良いが、フイルムは救助後に現像するとして、カメラを十のひとつに、フイルムを十のもうひとつにしてしまうとして、ではそのフイルムは十本パックでひとつとしていいですかね?そもそもカメラなんか持っていくな!って話ですかね。

 写真は有楽町です。