稲村ケ崎の坂道

 写真は2019年の11月。鎌倉市藤沢市を海沿いを走って結ぶ江ノ電稲村ケ崎駅で電車を降りて、海に至る坂道を下る。伊豆半島の向こうに沈む夕日を見る人、撮る人。富士山と箱根山の稜線がシルエットになり、手前の江の島のてっぺんには展望台が光って見える。この写真に写っている海沿いの国道は国道134号線で、この信号を右折してしばらく進むと国道より左側、砂浜に張り出すようにして七里ガ浜の駐車場があり、左折するとすぐに稲村ケ崎だ。十代二十代・・・・いままで何十年にも亘り、年に五回か十回かに過ぎなくても、ずっとこのあたりに写真を撮りに通っている。いや、通うなんて意識はなくて、ただどこかに写真を撮りに行くときに高頻度で選ばれる場所なのだ。ずっとなにも変わらない気がする。信号を左折してすぐのところのバーは建物は同じまま、外観の色や店の名前や、すなわち経営者も出てくる料理も変わっただろう。でもそこにバーがあることが変わらなければ、あるいは建物が変わらなければ、変わったではなく変わらないということだと思える。でもあの店に入ったことは一度しかない。当時(2005年頃)、よくメールやBBS(!懐かしい)の書き込みでやり取りがあったY君と夜遅くに入ったその店で、薄く焼かれたシラスのピッツァを食べてビールを飲んだこと、そのときにビル・エバンスのムーン・ビームスが流れていたこと、なぜだか忘れずにいるものだ。

 あぁ、こんなことを書いていたら、近々に鎌倉を歩いてみたくなった。

ムーンビームス(SHM-CD)

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