たんぽぽのお酒

 これはたぶん金柑です。近所を散歩していたときに見掛けて撮りました。1月2日か3日に撮ったと思う。カメラはライカフレックスSL+ズミクロンR50mmF2。ライカレンジファインダーのフイルムカメラのライカM2やM3等々はとても高価ですが、一眼レフカメラはリーズナブルなお値段で手に入りますね。私は露出計を使わず、目で見た明るさでシャッター速度と絞り値を勘で決めて撮るので(自分の傾向として露出アンダーが多発するので露出計が壊れていなければ使えばいいものを、なぜかそうしていません)シャッターが正常動作してくれれば露出計が壊れていても、それで十分です。そうなると10000円未満で買うことも可能です。それでも日本のカメラメーカーの60年代70年代の中古カメラよりは相場はちょっと高いのかな・・・

 散歩をしていて、その実が小さいものも大きなものも、かんきつ類が実っているのを見つけるとちょっと嬉しくなるのは何故なんだろうな。植物は無口に淡々とそこにあるけれど、実が生るという成果が見えると、生きているんだなとか季節が進んでいるなとか、なにか時間が流れていることに意識的になるのだろうか。そんなことより、黄色やオレンジ色の真ん丸の実に単純に「可愛い」と思わされるんだろうか。いまはもう夏みかんも黄色くなっています。なんで冬なのに夏みかんが黄色くたわわに生るのか?と思ったことがありましたが、冬はまだ熟しておらず、食べごろになるのが初夏になる、そう思うと、もう黄色い夏みかんが、冬と春をこれから越していき、果実の内側ではせっせと「なにか」が起きている。それを人が食するという勝手な視点からだけみれば夏へと徐々に「美味しくなっていく」。

 そんなことを思っていたらアメリカのファンタジーSF作家レイ・ブラッドベリの「たんぽぽのお酒」のことを思い出しました。ひと夏を通してさまざまなことに出会っていく少年の話。大人や老人が過ごしてきた時間とその時間にどうしがみついているかを観察したり、大人たちの自分勝手や思い込みや妄想を炙り出したり、少年の話といっても人生の話だと思う。たんぽぽのお酒は仕込んだたんぽぽが時間を経てお酒に変化していく。それと同じように、ひと夏の時間が過ぎるなかで、大人になっていく少年や、それだけでなく変化する世の中そのものも喩えているタイトルなんだろうな。少年がひと夏を過ごすうちに酸いも甘いも様々知って経験して成長するのをたんぽぽのお酒にたとえるならば、夏みかんの実の中で、冬を越し春を越して行く時間の中で、なにか熟していくようなことが起きている。かんきつ類の実と、たんぽぽのお酒が、変化していくということにおいてどこか近しいように思えて、金柑→夏みかん→たんぽぽのお酒、と連想しました。

 今日と明日と、だいぶ暖かくなるらしい。