雨はいつか

 今週の月曜の13日、朝は曇りで昼前より雨となる。その雨が午後4時頃に上がると、雲が少しだけ切れた。午後五時頃に在宅勤務を切り上げて、3/14に必要なものを買いに自家用車でJRの駅ビルまで出かけた。玄関を出て西を見ると、上の富士山が見えた。写真の左側の稜線が白く光って線になって見えた。急いで部屋に戻り超望遠までの高倍率レンズがついている1インチセンサーのデジカメを持ち出して、マンションの上層階まで階段を駆け上り写真を撮った。

 買い物をして帰宅したらちょうど一時間が経過していた。午後六時の富士山は横にたなびく赤く焼けた雲を背景にシルエットになっていた(下の写真)。

 いつのまにか、暗くなるのがずいぶん遅くなっていることに気が付いた。当たり前だけれど雨が上がり、日が差す。それがたまたま夕焼けの時刻だと、目を瞠るような風景になることがある。数年に一度、目を瞠る。

 月曜はこの写真を撮ったあとにテレビニュースで大江健三郎の逝去のニュースを聞いた。その数日前にYOUTUBEに上がっていた3年くらい前の村上Radioを聞いていた。作家ご自身が「1973年のピンボール」というタイトルは、大江さんの「万延元年のフットボール」というタイトルを意識していたと言っていた。大江健三郎の名前を耳にしたのはそのときが数年振りだったんじゃないだろうか。その数日後の訃報だったから驚いた。小説は20代30代の頃にはときどき読んだものだ。そのあらすじはなにも覚えていないが、雨の森が出てくる小説を読んだと思う。あらすじは覚えていなくても、読んでいるときに自分が取り込まれている「作家世界の雰囲気」のようなことはよく覚えているものだ。この「その作家の作品を読んでいると取り込まれる雰囲気」に特徴がある作家が優れた作家なのだろう(それだけが唯一の尺度ではないけれど)。

 桜は来週には満開になるだろう。

♪ 雨はいつかあがるもの 雲はいつか切れるもの くよくよしないで 歩くのさ ♪(雨はいつか 歌;センチメンタル・シティ・ロマンス あるいは 加藤登紀子