時代とともに

 

 2007年に鎌倉の公園で。十六年経って、例えばここに写っている子供が当時4歳だったとするといまは二十歳になりました。その間、わたしはほぼ毎日写真を撮り続けていて、撮る写真は何年経っても変わり映えしない。やれやれ、という感じがしますね。

 先日、武蔵野美術大学まで片道二時間以上をかけて電車で移動しているときの往路に、電車内で読書をしよう!と意識的でいたのにもかかわらずバッグの中を探ったら本が入っていないではないですか。そんなことはないだろう、あれだけ、電車で本を読んでいこうと思ったのに・・・二度三度と探したけれど、本は入っていなかった。事実、夕方に帰宅したら、本は自室のベッドの上に置きっぱなしになっていました。

 そこで途中で本を買ってしまった。もう、家に順番待ちになっている本はとんでもない冊数になっているというのに。買ったのは、文春文庫の現代の短編小説ベストコレクション2023日本文芸家協会編「雨の中で踊れ」というもので12人の作家が選ばれている。この手の本は、もうずいぶん前からありましたね。毎年、××年短編ベストというのが出ていて、それをぺらぺらって捲ると知っている作家の名前がずらっと並んでいた・・・という時代があって、そのときには読者として文学の同時代にいたってことなんだろう。ところが、この買った本に収録されている作家で名前を知っているのは佐藤藍子森絵都だけでした。一穂ミチさん、存じませんでした。まさきとしかさん、すいませんわかりません。高野史緒さん、いやー聞いたことありませんね。君嶋彼方さん、すいません忘却の彼方なのか・・・等々。

 そこで知っているお二人には申し訳ないけど、佐藤さんと森さんは後回しにして、一穂さん、まさきさん、高野さん、君嶋さん、と読み終わり、いまは佐原ひかり著「一角獣の背に乗って」を読んでいる最中ですが、これがどれも実に面白いのです。たくさんの先達のたくさんの作品と、物語こそ違えど、思想や構成や物語の落とし方が同じじゃつまらないはず、と、読んでみると、皆さん時代は変わるその先端の同時代に書かれているからか戦略的なのか意識しているのか無意識にそう書けるのかは知らないけれど、なんか微妙にシニカルというのか、なんか故意にミニマルなのか、ちょっと海外の短編の風味が増えているのか、よくわかりませんが、ちゃんとたくさんの先達と「同じじゃない」新しさ?があって、なかなか面白いです。読書途中報告でした。

 自分が撮る写真ももっと変化していけばいいのにな。出来ないですね、なかなか。