夕暮れ時の建物の表情

 もうすぐ暗くなるほんの少し前の時刻。小学生高学年の頃、暗くなるぎりぎりまで友だちとキャッチボールをやっていると、そのうち友だちが投げた時点でそのボールが闇に紛れてしまい見極められず、突然自分のすぐ間近まで飛んできたボールが目に飛び込んで来てから、慌ててグラブを出しても、ときにうまく捕球が出来ずにボールが後方に転がって行った。そんなとき、友だちはまだまだボールはちゃんと見えるよ!と言ったことから、自分の視力がちょっと低下しているのか?と気が付いた。

 12歳になり、初めて眼鏡を作った。いまのように数時間待てば眼鏡が出来上がることはなくて、一週間くらい時間が掛かったと思う。裸眼のままバスに乗って出来上がった眼鏡を受け取りに眼鏡屋へ行き、出来上がった眼鏡を掛けて帰りのバスに乗った。するとバスの窓から見えたバス停留所に髪の長い女性が立っていて、視力が回復した私は、女性の髪の毛の「流れ」がちゃんと解像して見えるのが、正しく見えている世界だったんだ!とびっくりした。

 近視に気が付いた暮れ時のキャッチボールはこの写真を撮ったのと同じような暗さだったと思う。写真は茅ケ崎市給食センターの建物だが、このなかでいまも給食が作られているのかどうか判らない。なんとなく閉鎖している感じがしないでもない(そうじゃなかったらすいません・・・)。夕暮れ時が似合う建物がある。夕暮れ時になるとちょっと怖い感じに見える。この茶色い壁の小さな窓が目のように見える。すると壁のシミが涙に思えてくる。水木しげるさんの鬼太郎のアニメにぬりかべという妖怪が出てきたが、そんな風にも見えてくる。