昼間のスローシャッターで撮っていた12年前

 12年前の五月の写真をHDDに観に行った。タイムトンネルのようなHDD。この年の春から、カメラにNDフィルターを重ねてつけて、三脚にカメラをくくりつけ、昼間のスローシャッター写真を撮ることがマイ・ブームだった。カメラはAPS-Cサイズセンサーの1500万画素だった。シャッター速度はだいたい2~4秒くらいにしていたと思う。

 風の強い日に風を正面から受けて歩いて行くときは、風のない日に同じ道を歩いて行くときと比べて、決めたことや行動にはきっと違いが生まれているんだろう。旅に出る決心は風の日に生まれることが多いのかもしれない。 

 小学生の頃に校庭より少し高い位置にあった校舎と校舎をつなぐ渡り廊下を歩いていると、強い風が一陣吹き抜けて、校庭の砂塵がいっせいに舞い上がる、その風景を見るのが好きだった。その風のあとに乾いた校庭に通り雨が来て、あたりに土の香りが漂うのも大好きだった。それがどうして好きだったのか?なにか変化への決意を促されるような、そういう風の力を子供心にも感じたのだろうか。そういう日は、放課後に一人で遊びたかった。一人で草や木や池の様子を見て、小さな発見をして驚くことを望んでいたんじゃないか。

 12年前にこの写真を撮ったときは東日本大震災のふたつき後のことだ。スローシャッターで風(に動かされるなにか)を撮ろうと思い立った動機は覚えていないから、安易なことは書けないが、そういう時にこういう写真をたくさん撮っていた。