音に呼応した波紋

 昨日の土曜日に神奈川県立美術館鎌倉別館に吉村弘「風景の音 音の風景」展を観に行きました。以下、ちらしから抜粋・・・・「1970年代初めから環境音楽の先駆けとして活躍した吉村弘(1940-2003)。(・中略・)エリック・サティの楽譜に魅せられて独学で音楽を学び(・中略・)音を描くドローイング(絵楽譜)からメールアート、サウンドパフォーマンス、サウンドオブジェの創案、雑誌への寄稿、単行本の執筆など幅広く活躍。(・中略・)没後20年を記念する本展では、初期のコンクリートポエトリー、楽譜、写真、映像作品、サウンドオブジェ、モビール(・中略・)など吉村の多面的な活動を作品と多様な資料群によって紹介します。」とても面白かった。写真はミ/ズ/ナ/リという作品で、スピーカーから出る音に呼応して水面に波が立つサウンドオブジェ。単発の音に呼応してフラットな水面に一瞬波が立ち広がり消えて行く。水をためる水深の浅いプールの底の中央が共鳴板でその真下にウーファーが置かれているのかしら、構造はわかりませんが。見ていると音を周波数別にフーリエ変換したグラフのように、単純ではないが規則性を持って、その音の支配的な周波数複数の波が合成して立つというように見えました。

 他の作品。五線譜の横の直線がくねくねと自由に曲線になり五つの(ときに交わってそれ以下の数)の曲線で、そこに鳥などの形を残しながら、また五線譜に戻って行く絵。この方は音楽家でありパフォーマーでありイラストレーターであり現代美術家であり、それらの統合した個性なんだろう。

 五線譜ではない楽譜・・・私は見慣れていないからそれが楽譜ということもわからない、行列のような示し方だったり、動きの(音の)イメージや鳴らし方のエネルギーを示すような???わたしのすぐ横で作品鑑賞していた音大学生と思われる方から漏れ聞こえてくる話だと、彼らはこのような示し方の楽譜からでもいろいろとその楽譜にこめた思いのようなことをある程度読み取っているようだったな・・・凄いですね、現代音楽は。

 さて、この日は会場を使って夕方から、写真家のトヨダヒトシさんが吉村弘が遺した3000コマのポジフイルム写真からセレクトし、自分でスライドプロジェクターを操作して、スクリーンに投影するというアナログチックなスライドショーがありこれが予想通りよかったです。ビルの上階の窓から真下にあるバス停と街路樹とバス車線とならぶ車線を定点観察的に撮った写真シリーズは、一体どこで見たことがあったのか、なにかのグループ展だろうか、これは以前に見たぞと、思い出したが、いつだったんだろう。スライドショーの途中に夕立の大雨が通り過ぎて行った。途中屋根に当たる雨の音がして、それもスライドショーの偶然的パフォーマンスのひとつ、作品の一助だった。美術館の展示でも、写真集をめくっているときでも、周りの環境から聞こえる音や、光の変化が同時に起きているから、本当は二度と同じ「鑑賞」はないのだけれど、それでも美術館の展示や写真集をめくるという行為には、そういう環境変化に動じない部分が、このトヨダヒトシ的スライドショーと比較的に少ない。トヨダヒトシ的スライドショーは、環境変化も含め、それをアクシデントととらえると、一体となったパフォーマンスだと思います。何回も観に行きましたが、いつも、風や遠雷の音や突然の雨音が途中で起きて驚く。

 帰りに鎌倉駅近くの、以前このブログに待ち列用の椅子が坂に置かれて傾いている写真を載せた店に行ってハンバーグを食べました。そのときは列にはなってなくてすんなり食べることができた。そのときに気が付いたんだけど、坂に傾いて置かれた椅子の列は今日はなくて、平面のところに椅子列が置かれていた。どうでもいい些細なことだけど日常のなかでこんな風に、いろいろと変化が起きているもんだ。半月と少しの月。あと六日くらいで満月だろうか?ハンバーグはなかなか美味しかった。

 以上美術鑑賞をしてきた昨日の土曜のレポートでした。