少し前でも遥かむかし

 先週の今頃はまだ最高気温が30℃を越え、少し歩くと汗が流れて、気温だけを取り出せば真夏と大差なかった。そんななかでも、夕方のちょっとしたそよ風や、盛んに鳴いているコオロギや、日が短くなった西の空に現れる夕焼けを見ることで、なんとか秋を感じていた・・・というか、感じようとしていた。何十日も長く続いた暑い日々、だけど、ここ数日、とくに今日ですが、気温が平年並みにストンと落ち着く。そうすると、何十日も続きしかもつい数日前までそうだった暑い日々(=9月であっても感覚的には「真夏」)がもう遥か昔のことのように思えたりする。人間はすぐに忘れてしまうから、苦しみや痛みを乗り越えてまた生きられる、という話を聞いたことがあるが、今のことが支配的であり、過ぎたことはすぐに遠くへ去って行く。その去り方が、この気温の変化のように、徐々にではなく、断層のように起きると、断層の前と後で、感覚的には大きな時間差があるように感じてしまう。

 十日ほどまえ、断層の向こうだから遥か前に感じる十日ほどまえ、フイルムカメラでとある漁港で水面に揺れているヨットのマストを撮った写真です。

 映画「真夏の夜のジャズ」、1958年のニューポート・ジャズ・フェスティバルのドキュメント映画。登場するジャズ・ミュージシャンたちは、ほとんど、もしくは全員がもう故人になってしまっている。クルーカットのジェリー・マリガン、とても魅力的なアニタ・オデイ・・・。あの素敵な映画の冒頭に、ニューポートという場所のイメージカットというわけだろう、港の水面を映した場面があったと思います。記憶が正しければ。

 あぁ、また観たくなりました。真夏の夜のジャズを、ある真夏の夜に、某市の文化会館だったかで観たことがありました。あのイベントでは、アルコールを買って席に持ち込み、映画を観ながら、すなわちジャズを聴きながら、飲むこともできた気がします。