旅の朝のパン

 一人の旅で、朝と昼と夜の食事をどこでどう取るか?ガイドブック(紙の本というよりスマホ)で事前に調べて行きたい店を決めておいて颯爽とその店に向かったり。居酒屋のカウンター席の片隅にありついて、ほとんど飲めない(けど好きな)日本酒を(量が飲めないゆえにどれにするかを迷いに迷いながら)半合を頼みつつ三品か四品の料理を食べたり。すなわち、聖護院大根湯葉和えと、黒しめじ焼きと、鰆の西京焼きと、〆の漬物焼き飯(←これはある日の私の一例)を、おやじとあれこれ話しながら食べてみたり。たまには贅沢をしてみようと、一人なのにふんばって、有名店までコース料理を食べに行ってみたり。だけどそんな食事を毎回毎回できるわけもなく、食べ過ぎて腹がもたれているときもあるだろう。だからある雨の夜には閉店まであと数分の、パンを売っているカフェに駆け込み、ふたつみっつパンを買って、翌朝はホテルの部屋にロビー階にある無料珈琲を一杯持ってきて、パンを食べて済ませることもある。宿泊費が急騰している(以前は5000円で泊まれた宿がその4倍くらいはする)なか、ホテル予約サイトを使って少しでも安価なところを探した、そのホテルはまだ建ったばかりの新しいホテルで、部屋の大きさもベッドの堅さもユニットシャワー室の作りも快適だったが、バスタブと窓がない部屋で、全ての電灯を付けても薄暗かった。写真は、その薄暗い朝に食べた小さな立方体の塩パン。口の中に最初は塩味が、続いて甘味がふわりと広がり、とても美味しい。もう一つはクリームチーズクランベリーのパンだったかな。

 以前も、こんな風に前夜にパンを買って、朝に食べたことがあったものだ。でもそのときはちゃんと窓のある部屋だったと思います(笑)もし外が雨だったら、このまま少し部屋にいてベッドに横になり、旅先にいると読みたくなるような短編集を読もうかなと思ったが、スマホで天気を調べると、二時間ほど前に雨は上がり、外は雨上がりの快晴の青空らしい。さぁ、読書はやめて、出かけようではないか。せっかく旅に来ているのだから。今日も、自己満足のためなのか、すでにもう生理現象に近いのか、写真を撮るだろう。そして誰かのために何かを買ったりもするだろう。ふと耳に入って来た会話から興味をそそられたなにかを調べるだろう。どこかで聴こえた音楽が気に入るだろう。歩き疲れてどこかで休めばいいものをずっと歩き続けるだろう。

 旅にいても日常を忘れたりせず、日常のための旅だろう。だから、ほったらかしたりはしない。

 京都で久しぶりに恵文社一乗寺店に行ってみたら、西尾勝彦の詩集が何冊か平積みになっていました。十数年前に、この方の詩が気に入って、ガリ版刷りホチキス止めの詩集を何冊か買ったことがあったのを思い出しました。