晴海の展示場があった頃

 写真は東京都の晴海付近。あまり通行量が多くはない休日の道路。だけどいちばん左の車線ではなく右側に車が駐停車しているのは、そのときはちゃんと見定めなかったからもはや理由はわからないけれど、なにか車線設計上の理由があるのだろう。いちばん右に短い距離だけ停車スペースが作られているなんてことがあるかもしれない。

 いろいろなショーを行う大規模施設といえば、東京ビッグサイト幕張メッセ、国際フォーラム、パシフィコ横浜、が浮かぶが、三十年かもっと前は晴海にあった国際貿易センターが唯一だったんじゃなかろうか。勤務している会社の業務に関連するショーを見学に行くときには、浜松町駅から竹芝ふ頭まで歩いて行き、そこと晴海の展示場のあいだを5分か10分で行き来しているフェリーボートに乗って行ったものだ。そしてこれはいつも一緒に行っていた先輩の決めた独自の帰路経路だが、帰りは国際展示場から勝鬨橋、東銀座、銀座、と歩いて有楽町駅までたどり着いたものだった。途中で寄り道をしたこともあっただろうか?あったかなかったかさえ覚えていないが、そんな風だったら普通どこか寄るよね・・・とは思う。

 いつも一緒にショー見学に行っていた××先輩は、祐天寺のアパートで一人暮らしをしていて、キッチンのシンクタンクを、料理はしないから全く使わない、という理由で水槽がわりにして、金魚を飼っていた。とはいっても見たわけではなく、先輩がそう言ったのを鵜呑みにしていただけで、あれはジョークだったのかもしれないと、今になって思う。ちょっとイケメンの××先輩には××ファンクラブがあって女子社員が騒いでいたな。

 残業して、夜に一人暮らしのアパートに帰る。カンカンと音を立てて外階段を登って、鍵を開ける。玄関の小さなドアを開けて、すぐ横の壁にあるスイッチを入れると、少し瞬くようにしてから蛍光灯が白く灯る。それを合図にしてシンクに飼っている金魚が今日もぽちゃりと飛んだ。先輩はなにはともあれ、まずは金魚に餌を与える・・・なんて話が出来そうだ。

 金魚との恋を描いているのは誰の小説だっけ?室生犀星の「蜜のあわれ」か・・・。だけど××先輩は金魚に恋などせず、数年後には北関東の某市に住んでいた十歳も年若い女性と結婚したのだった。

 以上、思い出話でした。