氷室椿園

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 午前11時過ぎからカメラを持って散歩に出る。Tシャツに、ネルのシャツに、ウールのカーディガンに、フードのある薄茶色のモッズコート風シルエットのウールコート、このコートは息子からのお下がり、を着て、首からカメラをぶら下げる。35mmのレンズ。ブルージーンズ。靴は黒い起毛生地のクラークスで、これは五年くらい前のクリスマスシーズンになんとなく入った横浜駅近くの靴屋で買った。限定モデルという触れ込みだったが、長距離を歩くとちょっとだけ靴擦れが起きるのだったか、足の裏の筋肉が突っ張ってくるのだったか、相性が微妙に悪くて、あまり使っていなかった。しかし、このまえ、数年に亘り使っていた紺色のスニーカーを捨てたとき、その靴は安価なもので足の裏の当たるところ、は何ていう部位なのかな?そこが硬くて履きにくかったのでクッションにするためにインソールを入れていたので、それを抜き取ってクラークスに入れてみたら、なんだか相性が修正された気がしている。長距離歩いていないから、はっきりとは判らないけれど。

 今日は暖かい日曜日で最高気温は15℃前後だったそうだ。明日はもっと暖かくて、最高気温が20℃になるらしい。そんなわけで歩いていると「暑く」なったので、いやこの場合は身体があついのだから「熱く」の方かな?コートを脱いだ。

 どこか目的があるわけではない。加山雄三通りと言う名前が付いている茅ヶ崎駅南口から真っすぐ海に突き当たる通りを歩いて、海まで行ってみた。海沿いのサイクリングとウォーキング用の道にはジョギングをする人が大勢いる。ちょうど太陽が南中している頃だった。真正面の海の海面にきらきらと光の粒が見える。砂浜にはほんの数人だけ、その逆光でシルエットになっている大人や子供や犬がいる。その砂浜とジョギングの人の道のあいだの斜面には砂がさらわれないようにテトラポットのようなコンクリートの物体が置いてあるところも。テトラポットは四方向に突き出した福島の「かんのや」の「ゆべし」のような形だが、ここに置いてある物体は立方体の各稜線の部分だけがコンクリートの十センチか二十センチかの角型の「棒」で出来ているようなもの・・・だったと思うのだが、自信ないな。そういうので砂が海にさらわれるのを防ぐことが出来るのかな。その物体のあたりに座ったり、角に寄り掛かったりして、本を読んだり、音楽を聴いたりしながら、海に向かってすわっている人がいる。大抵は一人で、ときどきカップルで。一組だけ簡易バーベキューセットで火を起こしている四人組。私も読みかけの本、もうすぐ終わる本、と、次の本を持っていたが、彼らの並びに座ることとどこかで昼食を食べて空腹を満たすことを天秤にかけ後者を選ぶ。本はまたもや進まない。もはや読書が進むのは通勤電車と出張の飛行機のなか、だけではないか。寝る前にベッドにごろごろして本を手にしても、一ページと進まないことが大抵だ。

 そのくせ、昼食をとるまえに、氷室椿園に寄っている。椿の見頃はあとひと月ふた月あとになるが、たぶん、早咲きの木もあるだろうと思う。その見当の通り、何本かだけだが花をつけていた。客が私一人しかいない。椿だけでなく、少しだけある水仙や菜の花も咲いている。小さな温室のなかには、種の維持のために椿の枝を鉢に植えて根付かせようとしている。こういう手法って何て言うのだっけ?挿し木?上の写真は温室のガラス越しに撮った、この挿し木の鉢の写真です。椿には名前がある。植物学としての名前ではなくて、園芸用の?名前。侘助や黒椿やよく知られている。木札に書かれた名前を読んでいくと、春の夢とか孔雀とか曙とか花車、などなど。日本酒の名前みたい。日本酒の名前が椿の名前みたい、なのかな。そのまま演歌や昭和歌謡曲のタイトルのようだとも思う。

 一人で写真を撮っていたら、七十五±五歳って感じの散歩倶楽部?の方たちが二十人くらい集団でやって来た。まだ固い蕾だな、とおじいさんが言う。あら、私みたいだわ、とおばあさんが言う。大勢がいっせいにがはははと笑う。五分か十分で彼らは去っていく。

 駅ビルのとんかつ屋に寄る。メニューを渡される。限定メニューは別刷りでクリアケースに収まっている。「今シーズン最後の牡蠣フライをどうぞ」と書いてある。最後のつもりではないのだが、確率的には、二月になって、この宣伝を読むと「そうだな、そろそろ今シーズンの牡蠣も食べ収めだな」と思う人が多くいる、というところから導き出された宣伝という訳だろう。少し悩んで、牡蠣フライ2個と小ロースかつのセット食にする。それに牡蠣フライを一個追加して牡蠣フライを計3個にする。一つ目は何もつけずに、二つ目はソースで、三つめはタルタルソースで。ソースは少な目に。もちろん一番牡蠣の味がよく判るのはなにも付けずに食べた一個目で、それが一番美味しかったな。

 帰宅してから、ぼんやりテレビを眺めていたら、不意に、数年前?第二シーズンの孤独のグルメ白楽駅六角橋商店街の回が始まった。神奈川大学の学生が大勢やってくるボリューム満点の洋食の店、キッチン友。主人公の井の頭五郎は玉ねぎと豚肉のにんにく焼きを食べている。

 ふらりと入った洋食屋のことを思い出す。十五年くらい前に足利で入ってチキンカツを食べた店。五年くらい前に北浦和で入った店ではなにを食べたっけ?先日の「ニセアカシア展」のときに西荻窪駅近くの洋食屋ではハンバーグとチキンソテーガーリックチップ載せを食べて、その後会った人に、にんにく臭い!と言われた。

 夕方は昼寝。その後に入浴。恵方巻は食べませんでした。このブログを書き始めたことには、南からの風が強くて、さきほどから窓をずいぶん叩いてはひゅうひゅう鳴っていたが、いまは静かになった。風が収まった。

 今日は、まさにこの文章そのもののような、何もない、ぼんやりとした日曜日でした。

 そうだった。海から富士山を見たら、霞んでいたけれど、青空をバックにしつつ傘雲を載せていたのでした。今日は望遠レンズを持っていなかった。あのきれいな傘雲を被った富士を見つけたときには、重くても望遠を持ってくればよかったな、と思いました。

 

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