車窓を飛び去った町の一瞬

 少し前に東海道線JR東日本区間;東京-熱海)の窓からどんどん後ろへと飛び去って行く風景を、撮る方もいちいち出来栄えを確認することもせずに、どんどん撮った。そんななかにこの写真があって、これはたぶん東京都の大森駅あたりだと思う。どんどん飛び去って行くから、いちいち構図なんかを決める余裕もなく、一瞬人が見えたらそのときにシャッターを押そう、というような撮り方であり、下手な鉄砲も数打てば当たる、のであれば、下手なシャッターも数押せば当たる、ということが起きるもので、この写真の画面内の人の配置は、なかなかバランスが良い気がします。この撮り方でこういう写真を期待しているというわけでもないんだけど、これはこれで・・・

 たまたま東京ネオンという会社の社屋が写っています。写真に偶然写り込んだ会社がどんな会社か調べたことが何度かありますね。東京ネオンは昭和二年創業の屋外広告の総合企業。屋外広告の企画・設計・施工・保守を行っていると会社紹介ページに書いてありました。

 昭和三十年代か四十年頃までもあったかな、といまはほぼもう無くなった広告手法として、アドバルーンとセスナ機からのちらしのばらまき、というのがありました。昭和二年創業のこの会社の過去の業務実績のなかにはそういうのもあるのかもしれない。セスナからばらまかれるちらしは、セスナが比較的低空を飛ぶせいか、プロペラのエンジン音が大きく聞こえたから、まず気付かないということはない。子供が集まって外遊びをしていると皆で見上げて、わっ!と騒ぎになり、いまやっている遊びは一旦中断して、なんとかまかれたちらしを手に入れようと思い思いに走って行く。だけど、上空のセスナはあんなにたくさんのちらしを撒いて行くというのに、自分たちが探せる範囲にいったい何枚の紙が落とされたのだろうか?実際に誰かがちらしを見つけて拾ってくることは滅多になかったですね。

 昭和30年代40年代の神奈川県平塚市にはアドバルーンを上げているデパートとして「梅屋」と「長崎屋」がありました。長崎屋デパートはもうだいぶ前になくなったし、梅屋も去年閉館しただったか今年閉館予定だったか・・・。駅ビルラスカが出来てから商店街の勢力図と人流ががらっと変わってしまったと思う。どこの町でもそうだろう。