快晴で暖かい好日


 午前10時。鎌倉駅江ノ電のある方の駅舎からすぐ、駅にくっついているようにある1967年創業らしいカフェ・ロンディーノでポテトサラダトーストとブレンド珈琲で朝食。常連のおじさんが次々にやってきては、店にあるスポーツ新聞を読みながら珈琲を飲んでいく。窓から江ノ電のホームが見える。人の回転のリズムがよい。珈琲はサイホンで丁寧に作っていて美味しい(古くからの喫茶店にありがちな強い酸味がないのがいい)。中年のおじさんにとって程よい居心地。
 トーストが出てくるまでのあいだ、持ってきた堀江敏幸著「アイロンと朝の詩人」を読み進む。本の中で、堀江さん、高尾駅からなんとかバスで相模湖方面へ山越えをしたいらしく、必死になってその策をさぐっている。堀江敏幸の右往左往にも共感する。
 10時半過ぎ。由比ヶ浜通りの古書公文堂で川端康成著「感情装飾」の大正15年版をそのまま復刻した昭和44年の「名著復刻全集」のものを手にしてページをめくってみる。すると「寫眞」という短い文章のページが開いた。とある詩人が恋人と撮った写真を、その恋が終わったあとも持っていたのだが、あるとき詩人の肖像写真が欲しいと出版社に請われ、しかたなくその二人が写った写真を半分に切って、自分が写っている方だけを出版社に渡した。すると二人並んだ写真の中では、本当に可愛くって美しかったそのとき十七の恋人だったのに、切り離されて一人の写真の彼女を見ると「なあんだ、こんなつまらない娘だったのかと云ふ氣がした」という話だった。この「感情装飾」は500円。
 店の外に置かれたダンボール箱のなかに「ビックリハウス」がたくさんあった。70年代後半にはよく買っていた。エンピツ賞に応募してみたこともあった。懐かしくなり一冊だけ購入する。200円。
 11時過ぎ、鎌倉農協共同販売所に行ってみる。冬野菜っていろいろとあるんですね。カラフルで美しい。大根っていろんな種類がある。黒大根というのは名前の通り表皮は黒い。赤いカブや白菜が山積み。
 13時。都内恵比寿へ移動。電車内で合流した某に川端康成の本を見せる。復刻版の本は印刷のかすれ具合まで再現している。恵比寿駅近くを歩いていて見つけたレストランで昼食。チキンカツを食べる。某はサーモンのクリームパスタを食べる。
 14時半。原宿駅から明治神宮まで歩いて、遅い初詣。とはいえ、もう正月元旦から今日までにあちこちで神社に詣でているから何がなんだかわからない。人がたくさん集まっているところを写真に撮りたいといういつもの感覚で来てみたという面もある。カメラをISOオート+プログラムという完全カメラまかせにして歩きながら参拝の人波を、ノーファインダーも交えスナップしたのだが、いちいちちゃんとカメラを構えていなかったせいでほとんどの駒が手振れで失敗。データを見ると、ISO200くらいで、F3.5の1/60秒とかで、たしかにこれじゃあぶれるわな。いつも通り、高めのISO感度でシャッター速度を稼げばよかった。なんだかこういうテクニック的なことを考えるのが億劫になっていて、それでこんな風に失敗しても、まあしゃあないね、と、たいして反省もしないし落ち込まない。だからたぶん今度同じような機会がきても失敗を生かせないだろうな。たぶん、マニュアルのフイルムカメラを使っていたときの方がよほど失敗しなかった。どんどんいい加減になって、どんどん写真が下手になっている。
 15時代々木駅近くの地下にあるカフェでキャラメル・ラテを飲んで、長居する。
 16時代々木から新宿まで歩く。新宿でもう一人の某と合流して、ルミネ1の上階の店で、お好み焼きを食べてから、湘南新宿ラインに乗って帰って来た。
 暖かい好日でした。明日14日は成人の日だが荒天の予報で大変ですね。大磯左義長祭を撮りに行きたいが、これも荒天だと行かないだろうなあ。
 写真は鎌倉のペットショップの水槽で泳いでいた出目金。